「華代ちゃんシリーズ番外編」 「ハンターシリーズ」 「いちごちゃんシリーズ」 作・真城 悠 |
「ハンターシリーズ05」 (「いちごちゃんシリーズ」) 『いちごちゃんベースボール!』 作・真城 悠 |
俺は「ハンター」だ。 不思議な能力で “依頼人” を性転換しまくる恐怖の存在、「真城 華代」の哀れな犠牲者を元に戻す仕事をしている。 最終的な目標は、「真城 華代」を無害化することにある。 とある事件――というか「華代被害」――に巻き込まれた今の俺は、15〜6歳くらいの娘になってしまっている。その上、ひょんなことから「半田 苺(はんた・いちご)」を名乗ることになってしまった。 華代の後始末の傍ら、なんとか元に戻る手段も模索している。 さて、今回のミッションは…… 「へへ……っ、まかせとけ」 彼女はにやりとした。
「かっとばせー!」 後ろから秘密組織「ハンター」に勤める仲良しOL二人組、水野さんと沢田さんが応援してくれる。 今日は「ハンター」の紅白対抗草野球の日である。 ……組織についてあまり深いことを考えてはいけない。 「いちごちゃん」こと「半田 苺(はんた・いちご)」は、ダブダブのユニフォームに身を包んでバッターボックスに向かっていた。 ダブダブのユニフォームに後ろに縛った長い髪。寸詰まりに見える上半身に余計に大きく見えてしまうその胸。 目深にかぶった……というより頭が小さいので落ち込んでしまうヘルメット。 それらの要素が合わさって、半端な女装(?)なんかよりもよっぽど可愛らしく見えるいちごだった。 振り回されているように見えるバットをかつぎ、構える。 キャッチャーがカマをかけてきた。「やめとめやめとけ。その身体じゃ振り回されてるぞ」 「うるせー。お前こそパスボールに注意しとけ」 ズバン! とミットに突き刺さる投球。 「――ットらーイク!」 憮然としてバットを下ろすいちご。 ピッチャーに投げ返すキャッチャー。 「汚ねえな」「思いやりだよ」 ベンチ側では女性軍がぶうぶう言っている。女の子をいじめるな! だそうだ。 うーん、応援してくれるのは嬉しいんだけど……と、再びバットを構えるいちご。 それにしても……胸が邪魔だな。 ぐわっ! と伸びた球が、その胸に向かって飛び込んできた。 「うわっ!」 バットを放り出して倒れこんでしまういちご。 「きゃー!」 騒然となるグラウンド。 OL二人組も駆け寄ってくる。 「……なんて球投げるのよっ!」「顔に傷でもついたらどーすんの!」 水野さんに沢田さんがプンプン怒っている。 「ふう……、なかなかやってくれるじゃねえか――」 「へっ! ブラもまともにつけられない女は野球なんか出るなってこった」 「何だと!?」 やってきたピッチャーに思い切りガンを飛ばして立ち上がるいちご。 ……頭二つは違う。くそーっ。 「けっ! 今日は違うんだよ! お前らが股間を守るのと一緒でスポーツブラしてんだ!」 考えてみれば、何と恥ずかしいことを大声で言っているのか。 声の主がこの組織の “マスコット” だから許されるが、元の中年男だった日には―― 「へー! それじゃ見せてみろよ」 「あーいーさ! 見てほえ面かくなよ」 「いちごちゃん! 止めなさいよ!」 「そんな挑発に乗ること無いわ!」 二人の制止も聞かず、ユニフォームの前ボタンを次々外していくいちご。 そして……思いっきり前をはだける。 「どうだっ!」 「今度は三日も出て来てないが……何があったんだ?」 「はあその……(ごにょごにょ)」 「ふん……それで?」 「それが、もらいものだったらしくてブラの前が壊れてて――」 「まさか……」 「はあ、そうらしいんですよ」 「それでどうなった?」 「何でもとても綺麗な形だったとか――」 「そんなことは聞いとらん」 「……いいから出させろ。もうすぐ健康診断だ」 |