「華代ちゃんシリーズ・番外編」 「ハンターシリーズ」 「いちごちゃんシリーズ」 ![]() 作・真城 悠 |
ハンターシリーズ08 (いちごちゃんシリーズ) 『いちごちゃんバースディ!』 作:真城 悠 |
俺は「ハンター」だ。 不思議な能力で “依頼人” を性転換しまくる恐怖の存在、「真城 華代」の哀れな犠牲者を元に戻す仕事をしている。 最終的な目標は、「真城 華代」を無害化することにある。 とある事件――というか「華代被害」――に巻き込まれた今の俺は、15〜6歳くらいの娘になってしまっている。その上、ひょんなことから「半田 苺(はんた・いちご)」を名乗ることになってしまった。 華代の後始末の傍ら、なんとか元に戻る手段も模索している。 さて、今回のミッションは…… 「いいからこっち来いよ」 ハンター5号が誘う。 「何だよ……って、ここオレの部屋じゃねーか」 特に何かがある訳でもないのに、やけに熱心に誘いやがる。どーにも嫌な予感がした。 「じゃあ、これ付けてくれ」 なんとアイマスクであった。 「……おい! ヘンな事考えてんじゃないだろうな!?」 「まさか! 元同僚を襲ったりするもんかっ」 どうもこの5号はイマイチ抜けているところがある。いちごは一抹の不安を覚えたが、渋々マスクを付ける。 そしてそのまま部屋の中へ…… 「……取っていいぞ」 そう言われて、アイマスクを取った瞬間だった。 「おめでとーっ!」「誕生日おめでとっ!」 派手にクラッカーが鳴らされ、歓声があがる。 「こ……これは?」 「いちごちゃんおめでとー!」 仲良しOLの水野さんと沢田さんもいる。 テーブルの上に、大きなバースデーケーキがしつらえられているではないか。 そうか……今日ってオレの誕生日だったっけ…… 「あ――ありが……」 言葉が出なかった。 う……な、何だ? どうして涙なんか―― 「オレのために……その……」 全く違う身体に閉じ込められて不便な生活を強いられているいちごだったが、この心遣いは染み入るものがあった。 「で、これがバースデープレゼントだ」 ハンターの一人がプレゼントの包みを自分でバリバリと破った。 いちごのこめかみが、ぴくっ……と動く。 箱の中身は、真っ黒な生地にどぎついほどの真っ赤なスカーフ、安っぽい仕上げのセーラー服だった。 「どうだ? 似合いそうじゃんか!」 「それなら俺はこれだ!」 次の職員が出してきたのは、オレンジがかったピンク色のウェイトレスの制服だった。 「じゃあ俺はこれだ!」 露出度の激しいレースクイーンのワンピースだった。いちごの頬が紅潮し、口の端がぴくぴくと震えだした。 「こんなのはどーだ?」 なんと全て揃ったバニーガール衣装一式セットだった。 「……しかも!」 どでん! と、身長ほどもある鏡が立てられる。「これで自分の姿も確認出来るぞ? どうだ!」 いちごはわなわなと肩を震わせ始めた。その目には涙が一杯たまっている…… こ、こいつら…………オレをからかうつもりで……!! ガタンッ! と音をさせて立ち上がると、いちごは奥のバスルームに閉じこもってしまった。 「あんたたちサイテー!」「何考えてるのよ!」 趣旨を聞かされていなかった女性二人が激怒する。 「いやその……これは――」 弁解を始める男たちだが、これは形勢が悪い。 あらん限りの罵声を浴びせる水野さんと沢田さん。自分たちが用意していた可愛らしいパンティーはしっかり背中側に隠してある。 そのまま何を言ってもいちごは出てこなかった。 やつれた様子のいちごが部屋の中に戻ってくる。 ぶち壊しになった宴の跡が、片付けられないままそこにあった。 あいつら……元に戻ったら見てろよ…… ……しかし、 部屋には「プレゼント」もそのまま放置されていた。それをひとつひとつ、つまみ上げて確かめる。 全く、何を考えているんだあいつらっ。 でも……これってどんな感じなのかな――? 男たちは、いちごの部屋の外で話し合っていた。 「やっぱりマズかったかな?」 「うーん、ちょっとやりすぎだったな」 「……謝りに行くか?」 「そうだな」 意見が一致し、全員でドアを開ける。「おーい!」 「……っ!?」 「今度は4日目だぞ。しかも5人を半殺しとは穏やかでない」 「はあ」 「ひょっとしてあれか? 職員連中がいちごをからかって元気付けてやるとか言ってたが……何か失敗したんだろ?」 「まあ、失敗は失敗なんですけど――」 「どうしたんだ」 「それがその……バニーガールの格好で、鏡に向かってポーズつけてウィンクした瞬間に踏み込んだらしくて、その――」 「…………」 「メイクしてなかっただけマシかな……とか何とか」 「いいから連れ出せ。領収書清算するんだから」 |