「華代ちゃんシリーズ・番外編」 「ハンターシリーズ」 「いちごちゃんシリーズ」 ![]() 作・真城 悠 |
ハンター・シリーズ09 (いちごちゃんシリーズ) 「いちごちゃん戻れた!?」 作:真城 悠 |
* この作品は華代ちゃんシリーズ「オタクの願望」に関連があったりするみたいなので、ついでに読んどくと面白いかもしれませんよ。 |
俺は「ハンター」だ。 不思議な能力で “依頼人” を性転換しまくる恐怖の存在、「真城 華代」の哀れな犠牲者を元に戻す仕事をしている。 最終的な目標は、「真城 華代」を無害化することにある。 とある事件――というか「華代被害」――に巻き込まれた今の俺は、15〜6歳くらいの娘になってしまっている。その上、ひょんなことから「半田 苺(はんた・いちご)」を名乗ることになってしまった。 華代の後始末の傍ら、なんとか元に戻る手段も模索している。 さて、今回のミッションは…… ふん…… いちごは不機嫌だった。 どーも何か視線を感じるんだよな……気のせいかも知れないが。 いちごのスタイルは相変わらずだった。無地の白のシャツにジャケット。そしてジーンズである。 ただ、決して不潔にはならないように、どれも洗濯は行き届いている。そして……今まであまり触れてこなかったが、これまで角刈り程度で過ごしてきたいちごは髪の洗い方があまり上手くないので、どうしてもシャンプーをつけ過ぎてしまい、その爽やかな香りが周囲に充満していた。 そのシンプルすぎるスタイルも、スレンダーな中にも出るところは出たボディを際立たせていた。 回りを見回しても、鏡も見たことが無い様な男ばっかりである。紅一点で、しかも “格好いい” 美少女であるいちごは、自然と視線を集めていたのである。 別にその……好んでこんなところに来ているわけじゃない。ここでないと手に入らないCDやDVDなんかもあるのだ。 べ……別に女になっちゃったから、突然恋愛映画とか観始めたりとかしてる訳じゃないからな! 元から好きだったんだ! ……って、誰に向かって言い訳をしているのか。 目当てのサントラCDを手に取って、レジに向かおうとしたその時だった。 「……?」 突然身体に違和感を感じた。……いや、身体を包んでいるものにだ。 「ん? ……んんんっ!?」 さっきから、じいっとこちらを見詰めていたメガネの青年も、怪訝な顔をしている。 む、胸……が? そうだった。どうしたわけだか着けていたブラジャーがいきなり消滅してしまったのだ。 あ……先っちょが直接シャツに当たって…………じゃなくてっ!! これは一体どうしたわけだ? 何が起こったんだ? そうこうしている内に、ジャケットが、いちごが二人くらい入りそうな大きさの上着に変化する。 そしてジーンズは黒いズボンになり、どこからともなく黒いネクタイが首元に出現し、これまた黒い帽子が頭に被せられる。 「あ……」 勿論サイズが合う筈も無く、その巨大な衣類にすっぽり飲み込まれてしまう。 だが、次の瞬間だった。 「んんっ!?」 胸が……胸が……無くなっていく? 細かい変化を追っている暇は無かった。ぐんぐんと伸びていくその身長は、瞬く間にぶかぶかだったその衣類をぴったりとフィットさせていった。 恥ずかしそうにこちらを観察していたメガネの青年は、腰を抜かして床にへたりこんでいる。 「……も、元に……戻った…………のか?」 そこには15〜6歳の健康美を売り物にする美少女はもういなかった。 身の丈2メートルを越える、岩のような筋肉の、黒づくめの大男がいた……。 「ふ……」 ぐっと握りこぶしを作るいちご。……いや、「ハンター1号」。 地の底から響いてくるようなその重低音。それは間違いなくかつての自分の声だった。 やった……やったぞ。理由はよく分からないが、ついに元の自分に戻れたのだ。 もしかするとこれは貴重な例かもしれない。かつて「華代被害」に遭って自然治癒したという報告は聞いたことがない。 ひょっとして何かのきっかけがあってなのか? ともかく元に戻れたのだ。こんな嬉しいことはないっ。 時計を見た。 時刻は4時30分。よし、すぐに帰って組織に報告だ。……てゆーか、今までさんざんオモチャにしやがってあいつら見てろよっ!! 「……?」 だが……周囲の様子が変だった。フロア中の客、店員――全員が苦しんでいるではないか。 「おい、どうしたんだお前ら……?」 「また引き篭もっとるのかあいつは」 「はあ、何でも今度は泣きながら部屋に駆け込んだという話も……」 「それくらい、いつものことだろ」 「それがその…………どーもまた華代被害に巻き込まれたみたいなんですが――」 「巻き込まれた……っていっても、とうに『女』だろうが……」 「まあ、またメイドにされたのがショックだったんですかねえ?」 「知るか。いいから連れて来いっ。……ユニフォーム採寸するから」 |