「華代ちゃんシリーズ」



「華代ちゃんシリーズ・番外編」
「ハンターシリーズ」
「いちごちゃんシリーズ」

作・真城 悠


ハンターシリーズ10
(いちごちゃんシリーズ)

『いちごちゃんハッスル!!』

作:真城 悠

 俺は「ハンター」だ。
 不思議な能力で “依頼人” を性転換しまくる恐怖の存在、「真城 華代」の哀れな犠牲者を元に戻す仕事をしている。
 最終的な目標は、「真城 華代」を無害化することにある。
 とある事件――というか「華代被害」――に巻き込まれた今の俺は、15〜6歳くらいの娘になってしまっている。その上、ひょんなことから「半田 苺(はんた・いちご)」を名乗ることになってしまった。
 華代の後始末の傍ら、なんとか元に戻る手段も模索している。

 さて、今回のミッションは……


「ねえ、今度はあっち行こうよ!」
「そうね! あ、いちごちゃんこっちこっち!」
 水野さんと沢田さんがにこにこしながら手招きする。
 今日はオフの日だった。
 ……あんまり仕事してない気がするが、細かい事を気にしては「ハンター」には勤めていられない。
 いちごはこの仲良しOL2人組に誘われて、断りきれずにショッピングに駆り出されたのだ。
 流石に自分たちより遥かに年下の女の子に荷物持ちをさせるわけでもなく、三人は一緒に歩いている。しかしこの状況でショッピング……となると、宇宙の摂理であるかのように「着せ替え人形」状態にされるかと思いきや、二十代半ばである二人と女子中学生(?)の自分とではお店の傾向が違うので、それほどではなかった。
 ただし全くその毒牙から逃れられるわけもなく、おしゃれなパンツルックを着せられているのだが。
 ちなみにこの格好、彼女たちの見立て&おごりである。「中学生に払わせるわけにはいかないわ」だって。
 いや、別に学校行ってないし……見かけがこんななだけなんだけど……

 でもこんな風におごって貰えるなんて、案外悪くないかも……い、いかんいかん! 染まってどうするんだ! ぶるぶる。


 全員が仲良く荷物を持ち寄って、帰る途中だった。
 水野さんが柄の悪そうな男に肩をぶつけられてしまった!
「痛えな」「……あっ! す、すいませんっ」
 組織所属とはいえ水野さんはただのOL……なので、すごむ男にすかさず平謝り。
「……何だ何だぁ?」
 仲間らしき連中が集まってくる。……と、いちごがOL2人を押しのけて前に出た。
「お前ら女2人に徒党か? みっともねえな……」
 これが元の2メートルに迫る大男だったら、それだけで誰もが逃げ出していたのだろうが……
 意味が分からずにきょとん……としていたが、すぐににやにやモードに変わる男たち。
 今のいちごは(見た目)女子中学生。しかも今日はいつもよりも “ちょっぴりおしゃれさん” ……だったから(笑)。
「へへへ……お嬢ちゃん、怪我しねえうちに帰りな」
「……いいからかかって来いよ、三下っ」
 可愛い声でチンピラたちを挑発するいちご。
「あの……いちごちゃん――」
 原因を作ってしまった水野さんが、申し訳なさそうに声をかける。
「手加減 ―― してね♪」
 そう言って、いちごは茶目っ気たっぷりにウィンクした……


「だからどうして引き篭もってるんだ?」
「はあ……」
「まさか一般人を半殺しにしたんじゃないだろうな?」
「いやその……勿論わが組織の職員は無事に守ったんですけど、その……首謀者を簡単にのしたその直後にですね――」
「何だ?」
「その勇ましさに相手が一目ぼれしたらしくて……その場で告白されたらしいんですよ」
「…………」
「それだけならともかく、情熱的でストーカーまがいのアタックを未だに受けているらしくて――」

「……警備を強化しろ。一応秘密組織なんだから」