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ハンターシリーズ24
(いちごちゃんシリーズ)


『いちごちゃん!!マザー!!』

作:B・シュウ


 俺は「ハンター」だ。
不思議な能力で “依頼人” を性転換しまくる恐怖の存在、「真城 華代」の哀れな犠牲者を元に戻す仕事をしている。
 最終的な目標は、「真城 華代」を無害化することにある。
 とある事件――というか「華代被害」――に巻き込まれた今の俺は、15〜6歳くらいの娘になってしまっている。
 華代の後始末の傍ら、なんとか元に戻る手段も模索している。
 さて、今回のミッションは……


「よし、任務完了…」
 その少女は長い髪を後ろで1つにしばっている。Tシャツにジーンズというカジュアルないでたちで、その健康的な魅力は見るものを魅了する。
 実はその少女が元男であるなど誰も知る由も無かった。
 彼女は今日の任務も一通り終わり帰途に着こうとしていた。ちなみに今日はバイクで移動していた。
(ん?)
 バイクを停めてあった場所まで来たいちごはバイクの荷台にある不審な物に気付いた。
 それはダンボールだった。荷台に載せた上にご丁寧に紐で固定までしてある。
(まさか爆弾か?)
 いちごの戦士としての嗅覚は即座にそう感じた。自分たちの組織はまがりなりにも秘密組織である。どこか別の組織が自分たちの組織を狙って爆弾を仕掛けてくる可能性は十分にありうる……。
 実際そんなことは一度も無いしこれからも無いのだが(笑)、とりあえずいちごは慎重にダンボールの蓋を開けた。そして中身は…
「…………」
 いちごは目を見開いて絶句した。確かに「それ」はある意味で核爆弾にも匹敵するモノだった。
(くっ…一体どうすればいいんだ…)
 いちごは悩んだ。数々の修羅場をくぐってきた彼女でさえ「それ」に対する対策というものはまるで見当がつかなかった。そう、この…
イラスト 出川鉄道さん

「おぎゃー」
 何であろうそれは生後間もない『赤ちゃん』であった。ちなみに涎掛けに『ひめ』と書かれている。
「うわ…おい泣くな泣くな」
 いきなり火がついたように泣きだした赤ん坊にいちごは戸惑いを隠せない、
(う、泣きだしちまった。えーと…こういうときはどうするんだ?)
「おーい、頼むから泣き止んでくれ…」
 とりあえず抱き上げてあやす。するといちごの願いが通じたのか赤ん坊は泣き止んでくれた。
(ふーやれやれ………ん?)
 とりあえず安心したいちごはなんとも言えない雰囲気を感じて辺りを見回した。
 すると自分の少し後ろの方で近所の主婦とおぼしき二、三人の女性達がこちらをみてひそひそ話をしていた。さらにその視線はみな一様に軽蔑の視線であった。
 しばらく不思議がっていたいちごであったが、俄かにいちごは理解した。
 『バイク』・『ダンボールに入っていた赤ちゃん』・『今は若い少女の姿である自分』
 その三つのキーワードをが示す物はただ一つ、『子供を捨てに来た若い母親』しかなかった。
「いや、あのこれは……」
 思わず釈明しようとしたいちごにさらにひそひそ話が盛り上がる。主婦たちは有ること無いこと言って勝手に盛り上がっていた。
(う゛……)
 いつのまにか後ろからも視線を感じる…。見るとまたどこからか主婦のグループがいちごを見ていた。
 軽蔑の視線の嵐の中、いちごはいたたまれなくなって、
 その場から一目散に逃げた。もちろん赤ちゃんを連れて。
 かくして不条理な誤解を受けたまま帰ってきたいちごを待っていたのは更なる喧騒であった。
『いちごが赤ちゃんを連れ帰ってきた』というニュースは一瞬にして組織内を縦横無尽に駆け回った。(笑)
 組織内では
「くそっ、父親は誰だ!よくも俺たちのいちごを!八つ裂きにしてやる」また5号のように、
「いやあ俺たちに似てかわいい子だ。いちご!よくやった」などと主張する者。果ては
「ありゃ男の時に作っていた子供を引き取ってきたんだよ、きっと」と言い出す者まで出る始末。
 そして誰一人としていちごの話を聞いていなかった。否聞く気が無かった。(笑)
 さらに誰が言ったのか名前が「ひめ」であったため「姫いちご」だ、とますます「いちご出産説」が有力になってしまった。
 ちなみにこれらの人物は例外なくいちごに叩きのめされた。
「全くあいつら…」
 質問攻めにあいながらも何とか自分の部屋まで戻ってきたいちごは大きくため息をついた。
 何時の間に眠っていた腕の中の赤ん坊を見て、その安らかな寝顔に思わず微笑む。赤ちゃんの頭をなでながら、
「なあ、ひめ……おまえのお母さんは一体どこにいっちゃたんだろうなあ?」
 その問いかけが聞こえたわけでは無いだろうが、赤ちゃんは目を覚ました。そして
「うわっ」
 胸元でごそごそされ、いちごはくすぐったさに思わず悲鳴を上げた。
「こ…こら…ってそうか腹が減ったのか……確かさっきのダンボールに粉ミルクの缶が入っていたな…」
 と、赤ちゃんを抱えたまま腰を上げる。と、なおも胸をまさぐる赤ちゃんを見ていちごの頭にある考えが浮かんだ。
 浮かしかけた腰を下ろすと、キョロキョロとあたりを無意味にうかがう。
 そして片手で赤ん坊を抱き直すと、顔を赤らめながら空いた方の手でシャツをまくり始めた。
「うーん、こ、こう……か?」
 そう言いながら、ブラジャーのカップをずらす。
 (………)
 思わずいちごもどきどきしてしまう。
 ぽろっと出た胸の膨らみに、赤ん坊はゆっくりと顔を近づけ――

 がたっ

 驚いたいちごが戸口の方を振り向くと、そこにはどこか間の抜けた表情をした沢田さんが立っていた。
「いや…あの…これは……その…」
 いちごは必死で弁解しようとする。すると沢田さんは、
「えーと、何か……手伝えることが無いかと…思ってきたんだけれど……」
 そしてロボットのようにぎこちない動作で回れ右して、
「お…お邪魔しました〜」
 そしてドアが閉じると同時に走り去っていく足音と、「きゃ〜」という歓声が聞こえてきた。
 部屋では真っ赤になったまま硬直しているいちごを、赤ちゃんが不思議そうな顔をして見上げていた。

 後日いちごは女の噂話のネットワークが時にブロードバンドをも上回ることを知ることになるのであった。 




「またあいつは引きこもってるのか?」
「はあ……でも赤ちゃんの世話はしているみたいですが――」
「で、本当にあいつの子供なのか?」
「さあ?でも日にちを逆算すれば産む事は可能ですが…」
「全く…ただでさえ人手不足だというのに……産休は認めないからな。」
「はあ…ところでそれは一体?」
「見て分からんか?『ガラガラ』だ」
「…子供好きだったんですか?」