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 空からはいろんなものが降ってくる。
 太陽の光、雨や雪、これらは我々に恵みをもたらす空からの贈り物である。
 だが空からは時としてとんでもないものも降ってくる。


 その日、いつもと変わらぬ日常を送っていた街にあるものが降ってきた。
 「ん、何だあれは?」
 空を見上げてそれを見つけた男はヒラヒラと落ちてくるそれをじっと見つめた。
 「花びら……じゃないな。何かの紙切れか?」
 そう思い男は目の前に落ちてきたそれを拾って見た。
 「ええっと、なになに……『ココロとカラダの悩み、お受けいたします 真城 華代』?」
 「すいません。それ私の名刺なんです」
 その声に男が下を向くとそこには白い服に身を包んだかわいらしい女の子が立っていた。
 「おじさん、何か悩み事はありませんか?私でよければ力になりますよ?」
 ……数分後、男は鮮やかな着物を着た舞妓の姿に変身した。
 「な、何なんだこれはーっ!!」
 「よかったですね、悩みが解決して。じゃあ私、次がありますのでこれで失礼します」
 舞妓になった男(?)の叫びをまったく気にせず、少女はにこやかに微笑むといずこともなく去っていった。
 そして空にはまだ何枚もの「紙切れ」が空を舞っていた。


ハンターシリーズ26
(いちごちゃんシリーズ)


『空からの贈り物?』

作:ライターマン

イラスト 出川鉄道さん

 俺はハンターだ。
 不思議な能力で“依頼人”を性転換しまくる恐怖の存在、「真城 華代」の哀れな犠牲者を元に戻す仕事をしている。
 最終的な目標は「真城 華代」を無害化することにある。
 とある事件・・・というか華代被害・・・に巻き込まれた今の俺は15〜16歳くらいの娘になってしまっている。その上、ひょんなことから「半田 苺」(はんた・いちご)を名乗ることになってしまった。
 華代の後始末の傍ら、なんとか元に戻る手段も模索している。


 「○○町交差点にバレリーナ出現!!ハンターは直ちに急行せよ!!」
 「△△デパート屋上にレースクイーンが現れたそうです!!」
 「××小学校で小学生がバニーガールに変身、誰か手の空いてる人はいないの!!」
 携帯電話より秘密組織「ハンター」の司令室からの指示や悲鳴が聞こえてくる。
 司令室なんてあったのか?と思われる人もいるかもしれないが、予算が余ったので年度末に急遽こしらえたらしい。
 とは言っても壁に黒板、折りたたみテーブルとパイプ椅子、電話機は昔懐かしの黒電話という安普請である。
 そんなものに金をかけるなら俺達の給料を上げて欲しいぜ、というのがハンター仲間での評価だった。
 今我々の組織では成果主義の名のもとにリストラや賃金引下げを画策する上層部に対し、ハンターや事務員が労働組合を結成して雇用の確保と定期昇給の維持を訴えている。
 ……失礼、話がそれたようだ。


 俺は指示を受けると携帯を切って走り始めた。
 「まさかこんな無差別攻撃を行なうとは……」
 今までのパターンでは神出鬼没で、場合によってはその場に居合わせた何十人もの人間を一度に性転換することもあったがほとんどの場合は一箇所に限定されていたのに今回は違っていた。
 最も出現場所はこの街に限定されていたし、理解不能、予測不能が「真城 華代」の特徴なのでそう驚くことはないのかも知れなかった。


 「はあーっ……つ、疲れた……」
 俺はテニスコートで看護婦にされた学生を元に戻すと自販機でジュースを買って飲み始めた。
 街の中ではまだ被害が発生していたのだが、少しは休まないと身が持たなかった。
 「まったくテーピングが上手くいかないとつぶやいただけで看護婦にしてしまうとは何考えてんだか……しかし……」
 俺はジュースを飲みながら考えていた。
 普通「真城 華代」は神出鬼没で出現位置は予測不能である。
 しかし今回に限って言えば出現位置の予測がある程度可能なのだ
 すなわち名刺が落下する地点、そしてそれを拾った直後……そのとき周囲を取り囲めば「真城 華代」の捕獲が可能になるのではなかろうか?
 俺がそんなことを考えていたまさにその時
 「何だあれは?」
 の声に空を見上げると青空の中に一枚の紙がヒラヒラと舞っていた。


 俺は飲みかけのジュースを放り投げると走り出し、携帯電話で仲間に連絡をとった。
 紙切れは風に流されながらテニスコートから公園の芝生の方へと移動していった。
 俺は全力で走りながら紙切れを追った。
 あれを手にすれば「真城 華代」は現れる。そのときに仲間が到着すれば彼女を捕らえられるし、上手くすれば俺を元の身体に戻すことが出来るかもしれない。
 俺は地上スレスレにまで落ちてきた紙切れを捕まえようと手を伸ばした。
 後もう少し……
 だがその時、紙切れの進路上をサラリーマンが通りかかり、近づいた紙切れを掴もうとした。
 「どけえぇぇぇぇっ!!」
 叫んで俺はジャンプすると紙切れを掴みゴロゴロと芝生の上を転がった。



 「また引き篭もっとるのかあいつは」
 「はあ」
 「何があったんだ一体?」
 「ええ、それがかくかくしかじか……」
 「ふむ、それで首尾よくその紙切れを手に入れることができたのだな。だがそれならどうして引き篭もるのだ?」
 「その紙切れなんですが……『ハズレ』って書いてありまして」
 「はあっ!?」
 「『真城 華代』の名刺じゃなかったんです。それで自分の運の無さに落ち込んでしまって部屋の中で同じ言葉をブツブツとつぶやいてます」
 「なんと言ってるんだ」
 「はあ、それが『ニューヨークへ行きたかった』って……」
 「なんだそりゃ?」


 ……その後、名刺を拾った人間の中にニューヨークまで行った人間がいる……なんて話は俺は知らん。

(おわり)