「華代ちゃんシリーズ」



「華代ちゃんシリーズ・番外編」
「ハンターシリーズ」
「いちごちゃんシリーズ」

作・真城 悠


ハンターシリーズ39
『双葉ちゃんクッキング』
作・城弾


 「こんにちわぁ」
 ひときわ甲高い少女の声が響く。
 ここはハンターの本部。本来ならば関係者以外立ち入り禁止である。だが彼女は『関係者』であった。
 「なんだ。双葉か」
 内部で事務処理をしていたハンター24号。27号が顔を上げるが興味を失い書類に視線を戻す。
 「あーっ。ひっどーいっ。せっかく差し入れ持ってきてあげたのに」
 彼女は甘い香を放つ包みを学生かばんから取り出す。今の彼女の姿はブレザーにプリーツスカートの女子高生としての制服姿だった。
 「これ? お前が?」
 「そうよ。今日の家庭科の授業で作ったのよ」
 それほどボリュームのない胸を張る双葉。得意満面だ。
 包みを開くとそれはクッキーだった。可愛らしい形の甘そうなクッキーだった。
 「さぁどうぞ。召し上がれ」
 十代の少女特有のテンションの高い声で勧める。顔を見合わせる24号と27号。
 「どうしたのよ? こんな美少女が差し入れしたんだぞ。ありがたく思いなさい」
 「いや…確かに今は『美少女』だが元は『あれ』だろう・・・」
 双葉ことハンター28号は実はもともと男である。ところがいちごやりくと違い彼女はわざわざしくんで性転換された。
一度は元の2メーター百キロの巨漢に戻されたが次は巻き込まれ型でこの姿になった。
 その際には涙を流して喜んだと言う変り種である。
 現在の身分は非常勤職員。若い女性が必要なときに駆りだされる程度で普段は16歳女子としての生活を満喫している。

 「それがどうしたのよ。今が美少女ならいいでしょ」
 「うーん。そうは言ってもなぁ…なんかお前って違うんだよなぁ」
 「違うって…何が」
 「普通の女はそうまで自分が女であることに感謝なんてしないぞ」
 「ああ。それに元々男だったせいかどうも色々しぐさが過剰に女らしくてな。わざとらしいと言う奴だ」
 「ひ…ひどいわっ。可憐な乙女を捕まえてっ。それにあんたたちいちごのご飯なら食べてるじゃない」
 「いや。あいつ料理上手いし」
 「それにいちごはいい。心は男と言い張っているが体に引きずられ生活習慣などから徐々に女になりつつあるのか
時折出る女らしさがなんとも言えずフェロモンを放っていると言うか」
 「ああ。最近動きも小さくなっているし」
 「あいつの字。見たか。男時代から几帳面だったが見事な女文字になってるぞ」
 「それと料理。味覚が変ってしまったのか女の味付けになっててそれがなんとも」
 口々にいちごの「自然な女らしさ」を称える二人のハンター。黙って聞いていたが「女のプライド」を傷つけられ
 「ば…バカーっっっっ」
泣きながら飛びたす双葉にさすがに気まずい24号達。
 「いや…喰いたくない一番の理由は…」
 そういってちょっとだけクッキーをかじる。咀嚼した途端に「うっ」となり水を求める。
 「やっぱり…普通の二倍は砂糖を入れてるぞ。あいつ」
 双葉は極端な甘党だった。

 「それで双葉は例によってパフェのやけ食い中か…付けが利くからってまったく」
 嘆きのボスである。
 「両親と暮らしているから生活費は不要でハンターとしての報酬はほとんどが服か甘いものに消えているとか」
 「まぁいい。いくらなんでも限界はあるだろう。ところでどうしていちごが引きこもっているんだ?」
 「はぁ。なんでも24号達の話を聞いていたらしくて『俺はそこまで女とみなされていたのか』と落ち込んで…」
 「何をいまさら…いいから出せ。喫茶室からの救援要請だ。ウェイトレスのな」

 おまけ。

 (どいつもこいつも人を女扱いしやがって。よーし)
 結局引っ張り出されウェイトレスの衣装でパフェを作っていた。それを運ぶ姿に男のハンターの視線が集中する。
 なにしろお役所と思えない短いスカートだ。
 「ストロベリーパフェ。お待たせしました」
 「あれ?いちご。何してるの?」
 15杯目を平らげてようやく機嫌の直ってきた双葉が怪訝な表情をするがいちごはそれには答えない。
 黙ってくるっと方向転換するとスカートがふわっとめくれ上がり下着がもろ見えに。
 「ぶっ」あるものは鼻血を拭きあるものは蹲る。無反応なのは「女」の双葉と他のウェイトレスだけ。
 男ハンターたちはしばらく行動不能に陥れられた。

 凄まじい「自爆テロ」だった。