頻発する真城華代被害、
それを食い止めるために秘密組織「ハンター」は結成された。
そして今日、「ハンター」に新たな仲間が加わる事となった。
中央会議室、
「というわけで、
今日から此処に配属する事になった63号だ」
「よ、よろしくお願いします…」
「へえ〜、
久しぶりの新人だな」
「そういえば10号といい19号といい…、
最近は外国から帰ってきた奴ばかりだったからな…」
「経験0なのは35号ぐらいじゃないのか?」
「確かに…」
「悪かったっすね…」
「あの…、
そんなに新人が珍しいんですか?」
「まあな。
うちは基本的にスカウトだから…、
才能のある奴が見つからなきゃ新しいのが入らないんだよ」
「じゃあ僕は才能があったんですか?」
「そ、それは…」
「何で言葉に詰まるんですか!?」
「それで10号教官、
特訓って何を訓練するんですか?」
「ハンター能力だ。
才能があるのはいいが…、
上手く使いこなせないようだからな」
「はあ…、
そうですか…」
「じゃあ始めるぞ!」
「…で、
ヘロヘロになって帰ってきたわけか…」
「1号先輩…、
あの人厳しすぎますよ…」
「しかし、ハンター能力を上手く使いこなせないのは重大だな…。
せめて性転換能力ぐらいは使えないと困るぞ」
「そういう物なんですか?」
「華代被害の大部分は性転換による物だからな。
俺達の仕事の大部分は性転換された人を元に戻すことなんだ」
「そうなんですか…」
「ま、今日は早く寝ろよ。
明日もきついぞ…」
「なんか嫌な思い出がありそうですね…」
基地の近くを流れる川、
63号はそこの川岸に座り込んで水面を見つめていた。
嫌な事があった時こうしていると何故だか心が落ち着くのである。
「はあ…、
性転換能力は最低限必要か…。
一体どうすりゃそんなの鍛えられるんだよ…。
なんとかならないかな…」
「ふむふむ…、
お兄ちゃんは人を性転換させる能力がほしいのね…」
「そうそう…、
って誰だ!?」
63号は突然意識を失った。
ブラックアウトしていく意識の中で、
彼は水面に映る小さな女の子に変わろうとしている自分の姿を見た。
その日から暫くの間彼の消息は途絶えた…。
それから数日が過ぎた。
ハンター基地ではいつもと変わらない日々が続いていた。
そんな中アンドロイドのハンター、
31号=石川美依のセンサーが真城華代の反応を捉えた。
「目標Kの反応を感知。
今より行動に移る」
そう言うと31号は壁をぶち破りながら真城華代の反応がある地点へと走り去った。
「まったく…、
一々壁をぶち破るなって何度言えば解るんだ?」
「本当…」
それを見ていたハンター1号=半田いちごとハンター6号=半田りくはぼやいた。
「お〜い!
美依〜!」
突如31号の開発者、
ハンター14号=石川恭介が走ってきた。
「いちご!
りく!
美依を見なかったか!?」
「ああ、
真城華代を見つけたらしくて走ってったぞ」
「何だって!?」
「どうしたんだよ、
そんなに慌てて…」
「昨日の10号の特訓のせいで駆動系がいかれてるんだ!
走った時のブレーキがきかないんだよ!」
「何だって!
それは本当か!?」
「ああ!
燃料の残量から考えるとそんなに長く走れるとは思えないが…、
早く止めた方がいい!」
一方美真城華代被害の現場では…、
31号は目標の華代を見つけた。
「目標発見、
ただちに捕獲します」
31号はスピードを落とそうとした…、
だがスピードは落ちなかった。
「な、何で…?」
華代は後ろから突っ込んでくる31号の事に気がついていないようである。
そして2人は激突した…。
1号と14号はやっと華代被害の現場に辿り着いた。
ちなみに6号は他のハンターに報告に行っていた。
そこには呆然となっている少女と、
燃料切れで機能停止している31号と、
地面に倒れている真城華代の姿があった。
「美依の奴…、
華代に体当たりをかましたみたいだな…」
「とりあえず2人とも本部に運ぼう。
被害者は任せた」
「ああ」
1号は少女に近づくと彼女を男に戻した。
その後31号と華代は到着した他のハンターによって「ハンター」本部へと運ばれた…。
「それにしても真城華代を捕獲するとは御手柄だったな」
「ええ…」
「何だ?
何か問題でもあるのか?」
「はい…」
「何が問題なんだ?」
「あの後からも華代被害が報告されてるんです」
「何じゃそりゃ?
華代はここにいるんだろ?」
「それが…、
どうも様子がおかしいんです」
「華代なんか存在そのものがおかしいんだろ」
「それを言っちゃお終いです。
華代いわく自分はハンターの仲間だと…」
「仲間?」
「はい。
数日前に行方不明になった63号だって言うんです」
「何だって!?」
「信じてくださいよ!
僕はハンター63号なんですよ!」
「いや、
何で63号が真城華代になってんだ?」
「知りませんよそんなの!
気がついたらこの格好だったんです!」
「変わった華代だな…、
頭打った衝撃でどっか変になったか?」
「なってませんよ!」
「おい、
真城華代は此処か?」
「ってボス!?
何やってるんですか!
此処は華代被害者以外立ち入り禁止ですよ!」
「いちごには訊いてない。
お前が華代か?」
「だから僕は63号だって!」
「ならお前と会った時の事を話してみろ」
「え…、
確か…、
僕が道に落ちてる10円玉を拾おうとしたら…、
偶然僕と同時にボスが手を…」
「本当に63号のようだな!」
「ボス…、
そんな事やってたんすか…」
「しかし、何故お前が真城華代になってるんだ?」
「だから僕にも解りませんよ。
気がついたらこの格好だったんですよ」
「なんか覚えてることは無いか?」
「あ、そういえば…」
63号は行方不明なった日の事を話した。
「それだな…」
「他の人を性転換させる能力を与えるために真城華代にしたわけか…」
「多分その間は真城華代と同じ思考パターンにされていたんだろう、
だが美依が直撃したショックで正気に戻ったわけか…」
「そうだったんですか…」
「っておい!
これはチャンスだぞ!
華代が俺達の味方になったんだ!
その能力を使えば俺達も元に戻れるかもしれないぞ!」
「そ、そうか!」
「やってみてくれ!」
周囲の華代被害者達は63号に期待の目を向けた。
「は、はあ…」
「…で、
どうなったんですか?」
「見事に失敗だったよ。
ななちゃんの見立てだと正気に戻ったばかりのため能力をうまく使えないらしい」
「それで皆…」
「いちごみたいに引きこもる奴はいる、
10号みたいに蒸発する奴はいる、
りくみたいに哀愁を漂わせている奴はいる…」
「63号はどうしたんですか?」
「真城華代と呼ぶわけにはいかんだろ。
だから63をもじって半田睦美って…」
「そういうことじゃないでしょ。
今どうしてるんですか?」
「川岸で哀愁を漂わせている所に勘違いした美依に…」
「ああ、それで救急車がきてたんですか」
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