「華代ちゃんシリーズ」



「華代ちゃんシリーズ・番外編」
「ハンターシリーズ」
「いちごちゃんシリーズ」

作・真城 悠

ハンターシリーズ56
『思春期』
作・ヒラリーマン

ここ、ハンター組織内の一室…。
一人の少女が鏡の前に全裸で立っていた。長く美しい銀髪をした稀に見る美少女で、見た目中学生位だろうか、やや幼さを残したあどけない顔立ちで、たおやかな首から肩にかけてのライン、括れたウエストに キュッと上がった形の良いヒップ、すらりと伸びた脚と素晴らしいプロポーションをしていた。ただバストだけは年相応(?)に小振りだが、それでもツンと上を向き整った形をしていた。色白でシャワーでも浴びた直後なのか長い銀髪が濡れそぼり肌がピンク色に染まり得も言われぬ色香を漂わせていた。
…が、しかし、鏡の中の美少女はそんな自分に見とれているという風でもなく、むしろ憂いを帯びた表情で自分の体を見つめていた。特に胸の部分を…。

『くそっ!何故だ?何故この部分だけ千景に及ばんのだ!』

少女の名を『黄路 疾風』と言う。
かつては屈強な男であり、武術の達人で腕利きの用心棒であった。しかし、『碧眼の暗殺者』と異名を取る『浅葱 千景』と言うスナイパーに依頼主を殺され、自分も重傷を負わされるという屈辱を受けた。それ以来復讐の鬼と化した彼(彼女)は『浅葱 千景』を追い求めた。ところが漸く探し当てた『浅葱 千景』その人は見目麗しい美少女と成っていた。
復讐とはいえ武術の道に志す者として、あくまでも正々堂々、対等の勝負を望んでいた彼は仇敵の変貌に困惑した。しかし、偶然現れた不可思議な力を持つ少女に自分も美少女に姿を変えられ、ようやく対等の勝負が出来ると喜んだのもつかの間、ある出来事から仇敵の一糸纏わぬ姿を見て、自分と『千景』との対等で無い部分を発見してしまった。
それ以来、彼女(彼)は激しい劣等感と焦躁に見舞われた。

『おのれ、浅葱 千景っ!今に見ておれっ!必ず貴様と対等に成ってやる!』

そして疾風はいそいそと、ヒップの処に『ハ○ーキ○ィー』のプリントをした可愛らしいショーツを履き、未だ慣れぬ手付きでAカップのブラを付け短い黒のTシャツを着、ローライズジーンズを履くと未だ乾かぬ髪もそのままに思い詰めた様な顔で部屋を出て行った。

疾風は真っ直ぐ組織内のカフェにやって来た。そこには彼女よりやや年嵩であろうか、長い髪をポニーテールにし、トレーナーにジーンズというラフな格好をした高校生位の美少女がコーヒーと苺のショートケーキを前にして文庫本を読んでいた。
そして、疾風はその美少女のテーブルの前迄やって来ると…

「「いちご殿!!いちご殿!!」」
「な、何だよ?急にあらたまって?」…いちごと呼ばれた少女は驚いて顔を上げた。

疾風「いちご殿、お教え願いたい。貴女はどうしてその様に胸を大きくしたのですか?」
いちご「へっ?い、いきなり何を言い出すんだよ?」
疾風「頼む、いちご殿!是非お教え願いたい!」
いちご「い、いや、こ、これは俺が望んで大きくなったとか、そんなんじゃ無くて、そ、その何て言うか、気が付いたらこんな風に成ってただけで、…て、ゆーか疾風、お前さん何でそんなに胸の事に執ってるんだよ?」
疾風「お、俺は…、千景に負けたくない!奴とあくまでも対等に成りたいのです。対等の勝負をしたいのです」
いちご「なんか今いち言ってる意味が解らんが、あのなあ胸がでかいなんてあんまり得に成らんぞ。肩は凝るし、男からは変な目でジロジロ見られるし…」
疾風「それでも構いません!俺は千景と対等に成りたい!」

いちごは疾風の気迫にたじたじと成った。

いちご「わ、解った、お前の気持ちはよ〜く解った!けどよ、千景の場合は歳の割にデカ過ぎるんだよ。お前さんが小さいって言う訳じゃないと思うぜ。お前さんももうちょっと歳行きゃもっとでっかく…」
疾風「その頃には千景はもっと大きくなっているに違いない!それでは永遠に対等には成れません!」
いちご「…ったく!どう言ったら良いんだ…そ、そうだ、俺なんかより総務の水野さんと沢田さんに相談してみたら?あの二人ならなんか好い知恵を出してくれるかも知れないぜ」
疾風「ふむ…あの二人なら何か良い策があるかも…御迷惑掛けました、いちご殿」そう云うと疾風は一目散に総務部の方へ走っていった。

いちご「ふう、やれやれ。しかし何だってあんなに千景に対抗意識燃やしてるんだろ?」

疾風は総務部のドアを勢いよく開け、「「頼もう!!一手お教え願いたい!!」」と大声でしかし可愛らしい声で叫んだ。

水野「あら?疾風ちゃん、どうしたの?何か用?」
沢田「はは〜ん。さてはこれから誰かさんとデートであたし達にどんな服着て行けばいいか相談に来たのね?」…早合点もいいところである。

疾風「…い、いや、そうでは無く、そ、その〜つまり…」
水野「解った!服じゃなく下着の相談ね!」
沢田「デートならちょっとセクシー系にするのもいいんじゃない」
水野「さっそく見繕ってあげようか?」
疾風「は、はあ…それじゃ…て、違〜う!!」
水・沢「「えっ?違うの?」」
疾風「わ、私は…む、胸を…」
水・沢「「えっ?」」
疾風「む、胸を…大きくしたいのです…
水・沢「「はあ?」」
疾風「だ、だから…胸を…むねをおおきくしたいのですう〜!!」…疾風の顔は真っ赤に染まっていた。

水野・沢田両女史はキョトンとした顔をしつつもやがて我に返り…

水野「あ、ああ、そ、そうバストを大きくしたいのね?」
沢田「そんなの放っておいても大人になれば大きくなるわよ」
疾風「それでは遅過ぎるのです!今でなくてはならんのです!!」
水野「う、う〜ん。簡単に大きくする方法ねえ〜。豊胸手術するか若しくは…」
沢田「赤ちゃん作る事ね!」
疾風「へっ?」
水野「女の身体って、赤ちゃん出来るとおっぱいあげなきゃいけないでしょ?」
沢田「だから大抵の女の人ってペチャパイの人でも赤ちゃん出来ると大きく成るのよ」
疾風「…そ、それでは赤子を作れば胸が大きく成るのですね?」
水野「う〜ん、でも、これは女の子だけで解決出来る問題じゃないし…」
沢田「そう、男性の協力が必要だし…」
疾風「では、赤子を作りさえすれば胸が大きくなるのですね?」
水野「う、うん、ま、まあそういう事だけど…」
沢田「で、でも疾風ちゃんの年頃じゃあちょっと早いんじゃ…」

疾風は我が意を得たりとばかりに「お二人とも、かたじけない!良い策を教えていただきました。それでは失礼!」そう言うと一刻の猶予も惜しいのか、慌てて部屋を飛び出して行った。

水野「冗談で言ったつもりなのにあの娘ったら…男性に協力して貰うってどういう事か解ってるのかしら?」
沢田「ちゃんと性教育受けてないのかしら?今時珍しい位初心(うぶ)な娘ねえ」

確かに幼少の頃より武術の修業に明け暮れていた疾風はこういう事には全く知識が無かった。むしろ武術の稽古を受ける様な事かと思い込んでいた。
疾風はハンター組織内を男を求めて(?)捜し歩いていた。

ちょうどその時若い男性職員が前から歩いて来た。ハンター五号こと『五代秀作』であった。

『い、いたっ!男だ!』疾風は素早く駆け寄ると…
秀作の手を握りしめる。

秀作「えっ?や、やあ疾風ちゃん!ど、どうしたんだい?」
疾風「五代殿!折り入って頼みが有るのです!…実は赤子を作るのにご協力願いたい!」
秀作「な〜んだそんな事かあ…えっ?えええええ〜〜〜!?
疾風「わ、私では相手不足ですか?」

美少女に思い詰めた眼差しで見つめられ秀作はたじたじとなりつつ…
秀作「い、いや!そ、そういう事じゃなくて、そ、その、つまり突然なもんで、心の準備が…じゃなくて、こ、こういう事はまず付き合ってみて、お互いの事をよく解った上で…」

すると疾風は又悲しげな瞳で秀作を見つめながら「やはり私では相手に成らないのですね?」と言う。
こうなると男は弱い。
秀作「い、いや決してそんな事は…疾風ちゃんは可愛いし、こちらこそお願いしたい位で…て何を言ってるんだ俺は?」
疾風「では、是非一手お願いいたしたい!」
秀作「えっ?で、でもこういう事は場所とかムードが大切だし、それに疾風ちゃんは僕の妹より年下みたいだし年の差が…」
疾風「私は一向に構いません!いざっ!」

そう云うと疾風は秀作に抱きつくように身体を寄せていった。…もっとも本人にしてみれば、柔術の組み討ちの様に思っていたからであった。しかし、若い健康な男子である秀作にしてみればいきなり美少女に抱きつかれたのだから堪った物ではない。

秀作「あ、あわわわ〜〜〜!!ちょ、ちょっと疾風ちゃん!!そ、そんな大胆な!!」

…と、その時、秀作は背後に異様な殺気を感じた。そして恐る恐る振り向くと、そこには目を吊り上げ、頬をひくつかせこめかみに血管を浮き上がらせたいちごの姿があった…。

秀作「あっ!い、いちご!い、いやこれはそ、その違うんだ!そ、そのつまり…」と、そこまで言い掛けたとき…

「「ぱああああ〜〜〜〜〜ん!!!」」

廊下に小気味よい音が響き渡った…。

そして、いちごは無言のまま踵を返すとつかつかと自分の部屋に戻っていった。そしてその後を左?をまっ赤に腫れ上がらせ鼻血を垂らしながら秀作が追う。

「「い、いちごおおお〜〜〜!!違うんだあああ〜〜!!」」

…そして又その後を…

「「五代殿〜〜〜!!何処へ行くんですかあああ〜〜〜!!ぜひぜひお手合わせを〜〜〜!!」」

そして、この様子を廊下の影から一部始終見ていた二人…。

水野「う〜ん。疾風ちゃんの想い人が秀作君だったなんて…」
沢田「これは三角関係に発展しちゃうわね…」

(完)