「華代ちゃんシリーズ・番外編」 「ハンターシリーズ」 「いちごちゃんシリーズ」 ![]() 作・真城 悠 |
ハンターシリーズ68 『ハンター捕物帳 〜みそっ娘トリオの場合〜』 作・ 天爛 |
「お兄ちゃん、悩み事ですか?」 「あぁ、いまある組織に追われているんだ。華代ちゃんだったっけ? 逃げるの手伝ってくれるかい?」 「あっ、それなら簡単です。すぐしちゃいますね」 「えっ!?」 華代ちゃんのその言葉に反応するかのように、80キロ以上あろう男の身体は収縮を始める。 ある程度で胸と尻の収縮は収まるが、他の部分の収縮はなおも続いた。 最終的に身長にして150、体重でいうと元の半分もない37キロ位になったかという所でそれは止まった。 ぼさぼさだった髪がするりと伸びる。気が付くと腰まであるさらりとしたロングヘアになっている。 「では、また御用がおありならよろしくお願いしますね」 自体を把握しきれず呆然としている男を他所に華代ちゃんは何処かへと去っていった。 「な、なんだったんだ……。って、やけに声が高いな……」 そう呟いて、自分の声の変化に気づいき、目の前に手をかざす。脂ぎって浅黒かった筈の肌が、瑞々しい白い澄んだ肌となっている。 「手も細くなってるし……」 その場で軽く跳んでみる。 「それに体が妙に軽い……」 身体に似合わず大きな胸だがそれはあまり気にならなかった。きっちりとプラで固定されているらしい。 視線を下ろし、自分の着ている服を見て、そして……、唖然とした。
「・・・なっ、なんじゃこりゃあ〜!!」
その日、ハンター基地の中は珍しく重々しい空気に包まれていた。 「緊急事態だ!犯人護送中のバスに真城華代が現われた。おそらく華代が真っ先にするのは犯人の逃亡の手伝いだと思われる。各人、手遅れにならない内に現地に向かい逃亡中と思しき犯人の確保を。なお、今回に限り華代被害者の意志はないものとする」 ボスはそう無線機に向かって叫んだのち、ブラインドウィンドに指を引っ掛けて一言呟いた。 「みな、たのむぞ」
「こちらハンター30号、ボクと美央、そして美玲、計三名現地に到達したよ♪」 「了解。ではターゲット確保に向かってください。まだ他のハンターは到着してませんが着き次第連絡します」 「「「ラジャー!!」」」
「おっし、行くか」 背中に小さめのスケートボードを担いだ少女が、靴の紐を結び直しながらそう言う。 ちなみにバイト途中で抜け出したのか、バイトが終ったところでちょうど呼び出されたのか、バイトに行っている某ファーストフード店の制服を着ていたままだ。 「うん♪」 無線に出ていた少女がお気楽な雰囲気でそう答える。 先程の少女と基本的な服装は同じもののスケートボードは背負っておらず、代わりに胸の付近に葵紋のブローチをしている。 「ちょっと、待ってください。いま、ターゲットがどこにいるか調べますので」 最後のひとりが二人を制止した。メガネを掛けていること以外はほかの二人と同じ服装だ。 「オッケーだ、美玲。なるべく早めに頼む。って、美登、勝手に動くんしゃねぇ!」 スケートボードを担いだ少女・美央がブローチをした少女に叫んだ。 「大丈夫♪ ちょっとあそこの自動販売機でジュース買って来るだけだから♪」
なにやらメガネを弄っていた少女・美玲が声を掛けた。 「ターゲットの居場所が判明しました。他もいくつか被害者反応がありますが、多分護衛中だった警官でしょう。まあ今回の最優先ターゲットは逃亡中の犯人なので彼らは後回しでいいでしょう。それで犯人ですが……、1つだけ離れた位置に反応があるので、多分それでしょう。位置はその自販機の近くの小道です。先は行き止まりなんですぐ捕まると思います」 実はこのメガネ、天才発明家であるハンター14号の発明品で華代被害者探知機能がついている。 ちなみに美央のスケボーとシューズ、美登のブローチも14号の作品だ。 簡単に説明すると以下のような感じだ。
美央のスケボー……太陽光充電式電池内蔵で高機動での走行か可能。 美央のシューズ……横にあるダイヤルを回すことで最大6倍までの脚力強化が可能。 美登のブローチ……高性能の変声機能付きで美登の演技の巧さも併さって常人なら実物かどうか判別不能。
「あ、美央。このジュースどうする?」 「うげ、なんちゅうもん買ってるんだ」 「だって、珍しかったんだもん♪」 「それより、さっさと追いかけましょう。ジュースは自転車の篭に入れとけばいいでしょう」 「了解」 「あとでどれ飲むか決めよ♪」 「……、俺はあれだけは嫌だぜ?」 「……、私もです」
自動販売機の近くの小道。左右を壁に囲まれて居り、日が差しこまない為か昼だと言うのに少々薄暗い。 その行き止まりにひとりの少女がいた。今回のターゲット、逃亡犯・柄逃 水鶏(がらにげ くいな)の成れの果てである。 「ちっ、行き止まりか……」 「お嬢ちゃん。ここんなところにいると危ないよ? ここら辺に極悪犯が逃げ込んだらしいから」 声を掛けたのは美登。胸のブローチがそう物語っている。まあ、いつもの様に相手がターゲットだとは気付いてないようだが。 どうやらばれてない――そう感じた柄逃は今の姿にふさわしい少女の振りで誤魔化すことに決めたようだ。 「えっ、そうなんですかぁ?」 「うん、そうだよ♪」 「じゃあ、あたし怖いのでさっさと失礼しますぅ」 だが、そう言ってその場を後にしようとする柄逃に、再度声を掛ける者が現れる。 声自体は美登と同じようなのだが、先程ののほほんとした感じではなく、男っぽい力強い声だ。 「おい、待て。美登、ソイツがその犯人だ」 「えっ、そうなの?」 「おいおい、ここが行き止まりでここに来るまで人に逢わなかっただろ。と言うことはソイツが犯人に決まってるだろ。」 そう言ってその声の主・美央は姿を現す。 柄逃は先程ののほほんとした少女に瓜二つな事に驚いたが、ややあって双子なのかと合点がいったらしい。 「えっ、なんの事ですぅ? あたしよくわかんないですぅ? それにその犯人って私にそんなにそっくりなんですかぁ?」 この期に及んで白を切る柄逃。 確かに元の自分とは全く違うのだから似ているかと言われて「YES」と答える者はいないだろう。それを上手く逆手に取るつもりなのだ。
しかし、そうは問屋が卸さない。先の二人と同じ声、だが二人より落ち着いた感じの声が柄逃に告げる。 「あぁ、その手は私たちには通じませんよ。私たちには貴方の様に真城華代によって変化させられた者を感知する機械があります」 美登の影からもう1人そっくりな人物、声の主である美玲が姿を現した。 「そして、貴方を元に戻す手段もね」 「あ、あなたたちぃ三つ子だったのぉ?」 「まぁ、似たようなものです。さぁ、連続食い逃げ犯・柄逃水鶏 覚悟しなさい」 「そうだ。って、おい、どんな大犯罪したのかと思えば食い逃げだと?」 「ただの食い逃げではありません。この過去1年の被害件数1500件以上のいわゆる食い逃げのプロです」 「……、それって1日3食以上喰ってないか?」 「1日4〜5食ですね。食べすぎです」 「すご〜い♪」 「ある意味凄いけど、ある意味バカだ……」 「あっ!! 柄逃がこっちに走って来るよ!?」
彼女らが話し込んでいた間に柄逃は強行突破することに決めたようだ。 元々は食い逃げのプロ。 成りが変わったとはいえ、逃げ切る自信は多大にあるらしい。 美登の報告を聞き、美央が迎撃の態勢に入る。 「ちっ、迎え撃ってやる。美登、美玲! 俺に続け!!」 「おう♪」 「ちょっ、このパターンは嫌な予感が……」 と能天気に返事する美登と、躊躇しつつも付き合う美玲。 まあ、美玲の予感が当たる事になるのだが……。
三人に激突する直前に柄逃はジャンブした。 華代ちゃんに「逃げる事」を頼んだからか、本来の柄逃の資質か、はたまた男だった時より飛躍的に体重が減ったからかはわからない。だが常人よりも高いジャンブだ。 そして……、 「俺を踏み台にしたっ!?」 そう、美央を踏み台にしてもう一段跳んだ。 ジェットストリームアタックの攻略法としては有名すぎる手である。 こうして柄逃は、躊躇した為に出遅れた美玲をおまけとばかりに更に踏み台にしてこの場は逃げ切った……。
「くそっ!」 「あぁ、逃げちゃったね」 「明らかに失策です。が、まだターゲットは捕捉中です。次があります」 「そうか、じゃあ、早速追いかけようぜ」 「待ってください。それでは先程のニの舞になり兼ねません」 「じゃあ、ど〜すんの?」 「作戦があります。聞いてください」 「おう」 「ボクもいいよ♪」 「まず美登が……、で、美央が……するんです。それであとは……。で、どうですか?」 「面白そう♪」 「乗った! ちょうどいらいらしてたところだ」 「手加減してくださいね。貴方の全力は死人が出ますから」 「わかってるって」 「殺してもいいですが、ちゃんと私の分も残しといてくださいね。ふふふふふ……」 「りょ、了解……」 美央の頬に一筋の汗が伝った。
それから数分後、視点は柄逃に移る。 「ふう、ここまでくれば大丈夫だろう」 かなりの距離走った筈だが、さすが食い逃げのプロ、これしきの事では息を切らしていない。 「さて、あいつらには俺がこの姿だとばれてしまったな。すぐにまた指名手配されるかも知れん。どうしたものか……」
「お姉ちゃん、お悩みですか?」 数歩行ったところにある曲がり角の先辺りから可愛らしい声がした。 それは柄逃が聞いたことのある、数時間前に聞いたばかり声だ。 「華代ちゃんだったっけ?」 柄逃はそう言って少し警戒しながらもその曲がり角へ近づいて行く。 「ふぇ。お姉ちゃん、私のこと知ってるの?」 「ほらさっき会った、華代ちゃんにこの姿にして貰った……」 「あっ、あの時のお兄ちゃん……」 柄逃は角を曲がって辺りを見渡したがポリバケツがあるだけでそこには誰もいない。 「華代ちゃん、どこにいるんだい? また悩み事が出来たんだけど解決してくれるかなぁ?」 「ご、ごめんなさい。同じ人に2回以上見られたらいけない決まりなんで……」 「あ、そうなんだ」 誰かがポリバケツの中に隠れているようだが、見られたから悩みを解決できなくなったなどと言われると元も子もないので追従しないことにした。 「あ、でも、悩み事は解決します。お仕事ですので」 「よかった、助かるよ」 「いいえ、で、どんな悩みなんですか? また追われているんですか?」 「あっ、そうなんだよ。なんかばれてしまったみたいで。だからもう一度違う姿に変えてもらえないかな?」 「いいですよ。あっ、それだと姿見せないといけないんで・・・、目を瞑っといて貰えますか?」 「うん、いいよ。それじゃあ、頼むよ」 そう言って柄逃が目を瞑って数秒後、ポリバケツがあった辺りからガサゴソと音がする。 やはりそこにいたのかと柄逃は確証を持つがそれを確認するなどというヘマはしない。 どさっ。 ポリバケツの倒れた音と共に華代ちゃんの声が聞こえる。 「はうぅ」 「だ、大丈夫かい? 華代ちゃん」 「あっ、大丈夫です。大丈夫ですから目を開けないで下さい。術が解けちゃいますから」 「わ、わかった」 一瞬慌てている華代ちゃんを想像して頬を緩めた柄逃は、術が解けたらいけないと更に強く目を瞑った。 その直後、柄逃は首筋に強烈な衝撃を受け、そして気絶した。
「やった♪ さすが美玲、作戦通り♪ うまく言ったよ♪」 柄逃の近くにいた少女がそう叫んだ。華代ちゃんではない。ハンターの一人、美登だ。 どうやら先に言ったボイスチェンジャー機能付きブローチで華代ちゃんの真似をしていたらしい。 「いえ、美登の演技力、美央のキックの正確さがあったからですよ」 角の影から美玲が現れて、そう言った。 そう、柄逃が受けた衝撃とは柄逃を挟んで美登がいる場所の反対側、それも柄逃に気付かれないぐらいかなり離れた場所から、美央の蹴った空き缶による物だ。 無論、例のシューズでキック力を強化して、だが。 「おっ、美玲が俺らを褒めるって珍しいな」 高軌道スケボーに乗ってやってきた美央がそれに突っ込んだ。 「もう来たのですか。さすがに早いですね。……にしても聞かなくていいことを」 美玲は照れくさいのかちょっと顔を赤くする。 「そうでもないよ? 美央がいない時は結構美央のこと褒めてるよ♪ 僕や美央のおかけで作戦が立て易いって」 「ほう。そうだったのか」 その言葉に、意外だという顔をする美央と…… 「うぐっ」 さらに顔を赤くする美玲であった。
その後、連続食い逃げ犯・柄逃水鶏(正式発表、年間2190件)は元の姿になって捕まった。(美央に)ぼこぼこにされた上に(美登に)ラクガキされていたり、(美玲の発案で)服だけは女だったときの物だったりしたが……。 ちなみに護衛していた警官のうち半数が元に戻るのを拒んだことを列記しておく。
「「「あいこでしょ!」」」 「あいつら、さっきから何してるんだ?」 「「「あいこでしょ!」」」 「あれですか?どうやら買って来たジュース誰から選ぶが決めているそうです」 「「「あいこでしょ!」」」 「ふ〜ん。で、どんなの買って来たんだ?」 「「「あいこでしょ!」」」 「えと、キャンタ白ぶどうとドクトリーヌ・ペッパーとドリアンドリンクらしいです」 「「「あいこでしょ!」」」 「キャンタ意外はずれじゃないか……」 「「「あいこでしょ!」」」 「えっ、ドリアンドリンクも駄目なんですか? 果物の王様なのに?」 「「「あいこでしょ!」」」 「……アレは恐ろしい物らしい。下手したらドクトリーヌ・ペッパーより危険な物だと聞く」 「「「あいこでしょ!」」」 「鼻を摘んでもですか?」 「「「あいこでしょ!」」」 「ああ……。ところでそろそろ鬱陶しくなってきたのだか、いま何回目のアイコだ?」 「「「あいこでしょ!」」」 「おそらく100は行ってるかと」 「「「あいこでしょ!」」」 「……、アミダで決めさせろ」
《後書きというかなんつうか》
ハンター捕物帳、タイトルは他のハンターのパターンも誰か書いてくれないかと希望を込めて。
それと30号の秘密道具はすべて名探偵コナンより。 美玲のメガネのついでに他の二人にも持たせてみました。 ・・・、ブローチの形に意味はありませんよ?
ちなみにアミダの結果。 美登 ―――――――――――――――――
キャンタ白ぶどう
※キャンタ白ぶどう(ふつうに当たり。) ※ドリアンドリンク(飲む前は果物の王様だから美味しいのではと思っていたらしい……。) ※ドクトリーヌ・ペッパー(当初、美央&美玲が嫌がってたもの。ドリアンドリンクよりはマシらしい……。)
PS. 真城の城への投稿に際して多少加筆修正してみました。 冒頭の(半端な)変身描写とか(笑
|