「華代ちゃんシリーズ」



「華代ちゃんシリーズ・番外編」
「ハンターシリーズ」
「いちごちゃんシリーズ」

作・真城 悠

こつこつこつ……

夜の街にて。

「さぁて、今日はどんな男ひっかっけっかなー」

物騒なことを言いつつ、一人少女が歩いていた。

その少女、体型・髪の質・声・服装、全てが女性のそれである。

当然のことであるといえばそうなのだが、彼女についてはそうではなかった。

それは、

「ハンター50号――後藤玲、だな」

「っ!?」

後ろから少女に言葉を投げかけた、マントの男が答えることになる。

「ハンター50号、後藤玲。女性化したのをよいことに任務をサボタージュした挙句、本部へも帰らず夜な夜な歩き回っては男を引っ掛けて金を騙し取っている。――その行為、許し難し!」

「だ、誰だ? 何故俺のことを知っている!?」

後ろを振り向き、そのマントの男に尋ねる、ハンター50号と呼ばれた少女。

「――ふ、答えてやるが世の情け!」

ばさっ!

どこかで聞いたような台詞と共に、男はマントを脱ぎ去る。

そこから現われた姿を見て、少女は顔色を変える。

「っ!? お、お前はっ! ぐ、ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 

 ハンターシリーズ70

 

「ガイスト02」   作:マコト

 

 

「50号が捕まった?」

秘密組織「ハンター」内カフェレストラン。

そこで、4人の男女がテーブルで食事をしていた。

「あいつって任務に出かけたっきり帰ってこなかったんだろ? 捕まったって……警察にか?」

ポニーテールの少女――平たく言えば我等が半田いちごが、ショートケーキを食みながら言う。

「いえ、ガイストのようですよ」

答えるのは、美男子だがどこか尻の軽い気のある男。

ハンター7号・七瀬銀河だ。

「ガ、ガイストっ……!? あわわわわわ……」

その言葉を聞いて、突然震えだす少女。

見た目は女子高生。

――なんせ制服着てるし。

小鼻のかわいらしい彼女は半田双葉、すなわちハンター28号である。

「ガイストって……あのおぢさん!?」

震える声で尋ねる双葉。

「いや、ガイストはガイストだけど、柚木さんの部下らしいね」

銀河はお茶を一口飲んで答えた。

ハンターガイスト・柚木陽介。

ハンター内の風紀・規律・正義を司り、組織内の犯罪や裏切りを粛清する存在・ハンター秘密警察の長官である。

「最近うわさの部下か……」

で呟くいちご。

「まぁ、今までは長官――柚木さん自身が活躍するからなかなか日の目を見なかったみたいですけどね。でも現在、彼は各国のハンター組織の視察に行ってますから、その間日本を任されているみたいです」

 「……い、いつのまにいなくなってたんだ……」

いちごには初耳であった。

「7号、部下ってどんな奴らなんだ?」

「僕が入手した資料によると、彼等は全部で10人――うち3人程が日本に残っているようですね。彼らの仕事は柚木さんと同じく僕達の監視・粛清・裁きってとこです。あ、あと、それぞれが僕達みたいに個性的なようです」

「俺達みたいって……をい」

沈黙する4人。

――4人?

 「あたし達の監視役ってこと? 上等じゃない!!」

『うぉう!?』

突如として叫んだのは、某プラグスーツそっくりな、真っ赤で身体にピッタリフィットした服に身を包んだ若き女性。

見た目は10代末といった感じ。

服と同じく真っ赤なロングヘアーの上には、どっからどーみてもネコの耳らしきものが乗っかっている。

「いきなり脅かさないでくださいよぉ、猫さぁん」

涙声で文句を言う双葉。

「そーだよ猫。ここは仮にもカフェだぜ? 大声出すと一般の客に迷惑かかんだろーが」

でっかい紙を出す男はいいのかいちご。

「猫さん、どうしたんだい?」

常に自分を見失わない男、銀河。

「ちっがあぁぁぁぁぁぁう、あたしは猫じゃないっ! あたしはハンター44号・獅子村 嵐(ししむららん)、人呼んで、『レオネル』よっっ!!」

だん、とテーブルに足をたてて吠える、嵐と名乗った女性。

「……毎回思うけどよ、何なんだよその名前。おまえの本名は”宍戸 祢子(ししどねこ)”だろーが。だから猫」

「そ、それは世を忍ぶ仮の名前っ! 愛と勇気と魂の名前こそがこのあたしのトゥルー・ネェィム!」

 どこかで聞いた切り返しをする嵐。

「言ってろ。――で、そいつらがどうしたって?」

「近々こっちに、一人来るっぽいですよ。何の為に来るんだか」

肩をすくめる銀河。

刹那、

『何だかんだと聞かれたら、答えてやるが世の情けよな!』

突如として響く、謎の声。

「誰だ!? 名を名乗れ!」

ガタン、と椅子を倒しつつ、嵐は叫んだ。

その途端、

フッ。

『! 明かりが……!?』

照明が消え、騒然とする店内。

「一般のお客様は外にお逃げくださいませー!」

ウェイトレスが一般客を誘導する。

それに従い客はみな出払い、残ったのはハンター4人だけとなった。

「いい加減姿を現したらどうなの、ええ?」

ドスの効いた声で嵐が言った。

「うわー、なんかこっちが悪者っぽいなぁ……」

「だまらっしゃい!」

双葉のナイスな突っ込みを返す嵐。

『いいだろう! 正義の姿、とくと見よ!』

その声と共に、ゴトッという音がする。

「――?」

いちご達が見上げると、天井の蓋が開いて、一人の男が降りてこようとしていた。

「――ぬっ? くっ、この……」

しかし、彼の着ているマントが天井裏のどこかで引っかかっていた。

「……何、アレ」

「さぁ……な」

呆然とするいちご達。

「え、ええいっ、このぉ……あ」

男がもがいていると、だんだんと引っかかっているマントの端が破れてきた。

――彼を宙吊りにしたままで。

「ぬっ、あっ、しまっ、ちょっ、よけろ、貴様ら!」

「え、え、ええ?」

戸惑う双葉。

「バカ、逃げるんだよ! 潰されるぞ!」

いちごが駆け出す。

双葉を連れて離れるために。

――だが。

「安心しなさい! このあたしが受け止めてあげるわ!」

仁王立ちで男の真下で待ち構える嵐がいた。

「おま……! ああもう、知るか! 双葉、こっちだ!」

「は、はい!」

いちごに手を捕まれ、その場を離れる双葉。

その直後、

「ぬぉぉぉぉぉぉぉ〜!」

「こぉぉぉぉぉい! ――て、ええええええ!?」

落ちてくる男。

――何故か、嵐の頭の真上に。

ドガァァァァァァン! パラパラ……。

すさまじい音を立てて、男は嵐に落下した。

 

 

 

「……おーい、生きてるかー?」

男につぶされ、手だけ伸びている嵐の手をつんつんと突付くいちご。

瞬間、

「ふんっ!」

ぐゎばっ!

「うわぁっ!?」

突如として起き上がる嵐。

そのまま男を押しのけて、仁王立ちする。

「はーっはっはっは! あたしがあんなことくらいで死ぬ性質だと思って!?」

全身打撲のはずだが、嵐は変わらぬ調子で笑った。

「――さて、おい、そこの変態マント」

「誰が変態だっ!」

いちごの呼びかけにツッコミを入れるが為にか、突然と立ち上がる男。

「あー悪かった悪かった。――んで、誰なんだよてめぇは。スパイなら容赦しねぇぞ」

そう言って、ずいっと立ち塞がるいちごたち。

――双葉は後ろに隠れていた。

「スパイがわざわざ姿を現すわけがなかろうが。さて、改めて――答えてやろうか我が名前を!」

 そう言うなり男は、マントを翻しながら後ろへ飛ぶ。

そして、天に向けて右手を伸ばし、言った。

「眩しくは、月の光、日の光、「正」しき仁「義」の名のもとに! 我ら名前をガイストチーム!!」

『……』

流れる沈黙。

しかし、お構いなしに男は続ける。

「ハンターガイストが部下の一人、ガイスト02、ここに参上! このオレが来た以上、風紀その他の正義は総て任せてもらう!」

いちご達を指差し、ガイスト02はそう言い放った。

「――ね、僕の言ったとおり。我々に良く似ているでしょう」

「ああ……特にあの熱血訓練馬鹿にな……」

 

 

「は――はくちっ! あうぅ……誰か私の噂をしていたか?」

「とうこせんせー、ここわかんないー」

「ああはいはい、伊奈、そこはな――」

 

 

数時間後、ハンター最上部・司令室。

「――というわけで、我らがハンターガイストからの命令により風紀その他を任せていただくことになった。異論はないでしょうな?」

「まぁ、本来の君達の役目に沿うものであるならば異論はない」

ボスとガイスト02は対談をしていた。

「――ただ、あまりに横暴なやり方だけはさけてくれよ。ハンター10号の前例もある」

「オレなりに抑えたやり方にしますよ。総ては正義の為」

 

02が去りし後、ボスは外を眺めていた。

「ボス……よろしいのですか? あの男に任されても」

どこからともなく現れた部下Aが尋ねる。

「若干の不安はあるがな。――しかし、だ。最近あまりにたるんでいるのも事実。一度は引き締めをしておかねばならんとは思っておった。ちょうどいい機会だ」

「……彼女が、動きださなければよいのですが」

その言葉に、ボスはただ黙っていた。

 

 

 

「さぁて、本日のベストショットは……と」

7号専用部屋にて、銀河は今日撮った写真の選別をしていた。

それにはいちごや燈子、千景に双葉といった女の子たちのあられもない姿が写っていた。

「うーん……」

『盗撮とはいかんなぁ、ハンター7号・七瀬銀河!』

写真の前で唸っていると、突如として声が響く。

「なっ、なんだなんだ!?」

少し慌てるも、すぐさま落ち着いて銀河はカラコンをはずし、天井を見上げる。

そこから出てくる銀色の目。

彼は魔眼持ちなのだ。

見えないものを見る力、といえば簡単だろう。

――しかし、そんなものを用いる必要はなかった。

「お前は!? ハンターガイストの……」

「いかにも、ガイスト02!」

天井に張り付いていた02は、そのまま降りてきてそう言った。

「――やるじゃないか。僕に気配を悟らせないなんて」

このとき、心中で銀河は驚愕していた。

今、言葉に出したように、彼は02の気配を全く感じることができなかったからである。

「このくらいの芸当は朝飯前、と言っておこうか」

マントに身を包んだまま喋る02。

「それで、何のようなんだい?」

「――ふっ、知れたこと。盗撮なんぞ言語道断! ハンターに有るまじき行為なり! よってここに懲罰するっ!」

「何だって!? ――くっ、不法侵入はいいのかっ!」

「問答無用! 覇ッ!

気合と共に、伸ばされた02の腕から光弾が撃ち出される!

「――ッ、避け切れない……うわぁぁぁぁっ!」

 

 

 

「さて……それじゃぁ三千万頂こうか」

「さ、さんぜんまん!? ふざけんなッ! 高過ぎるだろ!!」

医務室にて。

ハンター100号・半田百恵がハンター12号・半田逸美と言い争っていた。

お互い超能力として、百恵は治癒、逸美は能力の封印という力を持つ。

「なずなのドジッ子を能力で封印しようとして失敗、転がってきたなずなに巻き込まれて両腕を複雑骨折。三千万なんて安いと思うがね」

「どこの黒い医者だお前は! 治してくれたのは感謝するが、せめて一桁減らしてくれ!」

「ふむ……」

考え込む百恵。

「分かった。では三億だな」

「増えてる!?」

はたから見ていると漫才をしているようであった。

刹那、

『その金額、異常である!』

「ぬ!?」

「な、なんだ!?」

突然響き渡る声。

ザッ!

驚く二人の下に、マントを翻して一人の男が降りて来た。

もちろんガイスト02である。

「ハンター100号・半田百恵! 如何に貴様が他人を治す立場にあるとしても、その金額は暴力である! よってここに懲罰する!」

「な、なんなんだいったい!?」

「おぉ、なんだかよくわからんがやっちまえ!」

02を応援する逸美。

しかし、

「ハンター12号・半田逸美! 貴様もついでに懲罰だ!」

「はぁ!? ついでって、おま、ええ!?」

「喰らえっ!」

ドッ!

先ほどと同じく光の弾を撃ち出す02。

『う、うわぁぁぁ――!!』

 

 

「ふっふっふー、今日はどんな悪戯しよっかなぁ〜♪」

『悪事を働くな妖精!』

ドッ!

「うり〜っ!?」

 

「い、一緒にお風呂なんて入れるかーっ!」

「待ってりくちゃん〜!」

『ストーカー行為禁止!』

ドッ!

「きゃぁぁぁぁっ!?」

「うああ、俺も!?」

 

 

「完成だ……この薬品さえあれば……」

『危険な物質を生成するな!』

ドッ!

「な、内容はまだなのに〜!?」

 

 

 

数日後、ハンター司令室。

「どーすんですかボス! 皆変になっちゃってますよ!」

だん、と机を叩きながら叫ぶいちご。

「うーむ……よもやこんなことになるとは……」

窓から下をみながらボスは唸った。

「百恵さんが無料で診てくれるんです! 寒気がしたっすよ!」by57号

「あの銀河が私の部屋に来て、勝手に写真をとってしまってすまないと土下座してきた。何を考えとるんだ一体!?」by10号

「お父様が真面目にいろいろ開発し始めたんですぅ! いつものお父様じゃありませんですぅ〜!」by31号

「チャイナ服の修繕してたらジオーネが手伝てくれたアル。……余計酷いことになたけどなー」by61号

「りくちゃんと桃香ちゃんが半径1m以内に一緒にいるのに何も起こらないわ! 調子が狂っちゃう……」by水野女史

口々に文句を言う残ったハンターや職員達。

この数日で、大半のハンターが真面目に変えられてしまったのだ。

「これがガイスト02の能力……逆の意味で恐ろしい……」

苦虫を噛んだような顔でつぶやくボス。

「5号の奴、俺の寝込みを襲ってくることがなくなっちまった。――何か物足んねぇ……」byいちご

「千景が……からかってこないで銃器を磨いてばっかなんだ。あんなのは浅葱千景じゃないっ!」by疾風

「だぁぁぁ、もう静かにせんかぁぁぁぁっ!」

みなからの苦情がボスのイライラを頂点に達させた。

そのとき、

「あたしが何とかするよ!」

『!?』

声の主の方向へ全員が向く。

そこにいたのは、全身赤で3倍早そうな女性。

「猫!?」

ずべっ!

いちごの言葉にまともに彼女はずっこけた。

「ちがぁぁう、あたしは獅子村 嵐! 宍戸 祢子なんていう名前じゃないわ! ――それはさておき。あたしはあのマント男が許せない。だから、あたしに任せて!」

打った鼻をさすりながら言うハンター44号・獅子村 嵐。

どうでもいいが誰も「宍戸 祢子」とは言っていない。

「いや、しかしだな……相手はかなりの強者だぞ? 一人では――」

「い・い・か・ら・!」

有無を言わせぬ迫力で燈子を黙らせる。

「あいつがしているのは押し付けの正義だ。あたし達はそんなの求めちゃいない。何より、これじゃハンターシリーズにならない!!

とんでもないことを言う嵐である。

途端、

ふぃーおんふぃーおんふぃーおんふぃーおん。

『第三旧東京市ニテ真城華代出現。性転換規模ハカナリ大型。各員、出動セヨ』

「警報だ!」

「出動しないと!」

突然の警報に慌しくなる司令室。

彼ら、ハンターの本来の任務が来たからである。

人類の敵、願いを叶える少女・真城 華代。

彼女による性転換被害を食い止め、最終的には消滅させるのが彼らの目的なのである。

「おい、嵐! お前も来い!」

いちごが呼ぶも、嵐は動かない。

そして、

「司令官! あたしだけでもガイスト02を止めに行きます! 駄目って言っても行きますからね!」

ボスに向かって叫ぶ嵐。

ちなみに司令官とは彼女だけが言うボスの呼称である。

「――あーもう、めんどいから行ってこい勝手に」

投げ遣りな言葉で手を振るボス。

「了解! ――悪いね皆、華代は任せた!」

そう言うなり、嵐は猛ダッシュで部屋を飛び出していった。

「――大丈夫なんだろうか、あいつで」

そう呟いたいちごを含んだ、全員がそう胸の奥で感じていた。

 

 

『全ては、世界平和の為に!』

そう言いながら、02によって洗脳されたハンター達は、先ほどの警報で飛び出していった。

「少し違うな……全ては正義の為に、だがな」

その背中を見つつ、ひとりごちる02。

すると、

「いたなぁっ! 諸悪の根源ガイスト02!!」

「――ぬ?」

叫び声の方向へ向くと、そこにいたのは一人の女性だった。

「ハンター44号・宍戸 祢子。自称『レオネル』、または獅子村 嵐か……。何の用だ?」

落ち着き払った様子で02は言う。

「いいかっ! まず貴様に、正義を名乗る資格はなぁい!!」

指を突きつけて叫ぶ嵐。

「――何だと?」

その言葉で、ガイスト02の堪忍袋の緒に亀裂が入った。

「これは異な事を。オレの行為はボスの認証を受けている。それに、全てを正しくあるようにすることこそ正義ではないか! 貴様、何を根拠にそんなことを言うのだ!?」

「まずひとつ。司令官は『抑えてやれ』と言っていた。二つ、強制する正義は悪と何ら変わりはしない! そして、最大の三つ!」

そこまで言って嵐は呼吸を整える。

そして、言ってしまった。

「貴様の行為がまかり通ってしまえば、ハンターシリーズそのものが台無しになるんだ――――!!」

「んぐぅっ……!?」

衝撃を受けたかのようによろめく02。

「ほざけっ! 正義は絶対でなければならんっ! ――そういえば貴様も『獅子村 嵐』等という偽名を使っていたな! 意味をなさぬその行為、許し難し!!」

そう言って両腕を突き出す02。

「それはあたしの魂の名前!! これだけは絶対はずせないのよっ!! 見せてあげるわ、あたしの正義!!」

そう言うと嵐は両腕を天にかかげ、叫んだ。

「ジャスティスツゥゥゥゥール!」

ガキィッ!

瞬間、彼女の両腕に巨大な拳が装着される!

「ぬうっ!? ――ええい、喰らうがいい! 最大出力のジャスティスマインダァァァァァ!!」

ドゥッ!

もはやハンターシリーズのノリではなくなってきてしまったが、02の腕から閃光が迸る!

「ヘェルッ!」

バシィィィッ!!

拳で叩きつけるようにして、光を潰す嵐。

「アンドッ!」

そのまま02の間合いに踏み込む!

「ヘヴンッ!!」

バキィィィィィッ!!

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

強烈なアッパーで上空へ吹っ飛ばされていく02。

そして彼はそのまま、星と化すのだった……。

 

暫くして。

「我が部下がしでかしたこと、本当にすまなく思う。皆――すまない」

帰国し、報告を受けたハンターガイストが、全員の前で謝罪をしていた。

「なぁに、もう済んだことだし。皆元通りだしな。アンタの責任じゃないさ」

優しく語り掛ける百恵。

「それにしても――02本人は未だ行方不明か……」

呟くのは、元に戻った銀河であった。

そう。先日、嵐に吹っ飛ばされて以来、02は姿を現さないのである。

「この事件を招いた本人が帰って来ないようではな……。無事だといいが……」

責任問題うんぬんよりも心配をしてしまう一同であった。

直後、

ヒュゥゥゥゥゥ……。ドォォォォォォン!!

『うわぁぁぁぁぁぁっ!?』

何かが、上空から落ちてきたようである。

「な、何だ何だ!?」

各々が各部屋の窓から外を覗くと、そこでは信じられないことが起きていた。

「い……隕石ぃ!?」

素っ頓狂な声をあげる逸美。

そう。そこ――ハンター前広場に落ちていたのは、紛れも無い隕石だった。

しかし、それだけが問題ではなかった。

なんと、隕石の上には――。

「……何、あの子」

「魔法少女っぽいコスプレしてるけど……」

そう。そこには、一人のオレンジのボブヘアの少女が立っていた。

見た目は10歳ほど。赤を基調としたスカートの短い、フリルやリボンのあしらわれた所謂魔女っ子衣装に身を包み、胸にはリボンの中に青いブローチ。

そして手には、少女が持つには不相応な長さをもった杖。――これもまた魔法少女のそれにそっくりな、水晶と羽根で飾られたものである。

「何々? もしかして、宇宙人??」

興味津々で覗く嵐。

「――いたな」

フワァッ……。

その姿を確認したのか、少女は彼女に向かって飛んできた。

「な……浮いた!? もしかして、本当に宇宙人なのか!?」

驚愕する銀河。

「宇宙人なワケないだろうが。――ふっふっふ、ハンターよ、オレは帰ってきたぁぁ!!」

そう言って、少女は嵐のいた部屋――司令室に入ってきた。

「な、何者だ貴様は!?」

距離をとり、少女と対峙する嵐。

すると少女は驚いた顔をする。

「何者だて――ああ、この格好だものな。オレとは分からないか」

「その口調――もしかしてお前!?」

何を感づいたのか、驚愕する嵐。

「ふっ――その通り。オレは、貴様に吹っ飛ばされたガイスト02なんだよ!」

『な、なんだって――!?』

驚愕する一同。

「お、おま……何故そのような姿に……!?」

震える指で、ガイストは02を名乗る少女を指して言った。

「あー、この格好ですか。実は、嵐に宇宙へ飛ばされた際、偶然何か巨大な人型のものに突っ込んじまったんですよ。その瞬間オレの身体は焼き切れた――そう感じました」

経緯を語り始める02。

「だけど不思議なことに意識はあって。女の子の声が聞こえたんだ。『貴方は私の所為で肉体を失ってしまった。お詫びとして、新たな肉体と、悪に立ち向かう力を授けましょう』ってね」

「――女の子の声?」

その部分に反応する恭介。

「ああ。――何だったのかは知らんが、こうしてオレは新たな肉体を得た。――そして、正義の定義もな」

そう言うと、02は嵐に顔を向ける。

「お前に吹き飛ばされたとき、気づいたよ。正義とは実に裏返りやすいものなんだと」

「02……」

感激する嵐。

しかし、それは次の言葉で驚愕にかわることとなった。

「正義は強制するものじゃない。戦って、相手に打ち勝って初めて得られることだ。光の中の女の子と、お前に教えられたよ」

「――へ?」

ぽかん、と呆気にとられる嵐達。

「だから、オレは今日からガイスト02改め、魔法少女ガイスト☆レッツとして! 正々堂々とお前達を懲らしめてやる! 覚悟しろよ!」

ビシィ、と杖を向けてポーズをとる、02改めガイスト☆レッツ。

「――なんだか言いたいことが伝わってなかった気がするけど! その勢い、嫌いじゃないわ! 望むところよ!!」

そう言って、嵐は右手を差し伸べる。

それに応えて、レッツも手を伸ばし、互いに握手を交わした。

「負けないわよ!」

「こっちもさ!」

『……』

こうして、二人以外をそっちのけにした形で、この物語は幕を閉じるのであった。

――これでいいだ『いいわけねぇだろ!!』byその他全員

 

 

 

「――どう思う、14号」

「そうですね、ボス。02――苅須都 烈さんでしたね、命名は。彼――女が遭った、巨大な人型。これもおそらくは、とてつもない大型の真城 華代の可能性が高いです。烈氏から出ている波動は間違いなく彼女の被害であることを示していますし。――しかし、何故そんな巨大なのか……」

「やはり――そうか。ひょっとして我々の星は、彼女の掌の上にあるものなのかもしれんな」

「ええ。――ますます謎が深まるばかり。一体どういう存在なのやら、彼女は……」