「華代ちゃんシリーズ・番外編」 「ハンターシリーズ」 「いちごちゃんシリーズ」 ![]() 作・真城 悠 |
ハンター・シリーズ73 「能力」 作・匿名希望 |
今から15年程前、某所にある施設に1人の少女が送られてきた。 彼女の登録上の名前は「真沙羅・華」。 施設のデータには、 『この少女はこの世の中に無数に存在するといわれる「華代被害者」で、性転換のショックで記憶を無くしたため身元が解らなくなりこの施設に送られた』と記されている。 だがこれは彼女の正体を隠すために作られた偽りの設定に過ぎない。 彼女の正体を知っている者は限られている。 無数に存在する彼女の仲間達の中のほんの一部、 そしてもう1人…。
今から15年程前某所公園、 ここで大規模な華代被害が発生した。 公園の敷地内にいた男が全て女性化したのである。 周囲がビル街になってしまったため日照条件が悪く花壇の花が枯れてしまったのを嘆いた管理人が、 「もっとこの公園に花が欲しい」と言ったのを真城華代が「もっとこの公園に華が欲しい」と勘違いしたため公園中の男性を綺麗な女性に変えたらしい(余談だがこの性転換はかなり徹底していて公園内の動物や虫まで全部雌化していた)。 この被害を治めるために対真城組織「ハンター」はボスも含めて全員が出動した。
「6号、 そっちの状況はどうだ?」 「とりあえず8割方完了しました。 残りの二割は今4号達がやってる所です。 ボスの方はどうですか?」 「大体6割といった所だな。 今1号達が頑張ってるんだが…、ショックで記憶喪失になってる奴が多くて誰が被害者なのかわからん」 「こっちもですよ。 2号曰く戸籍や記憶まで操作されてる奴までいるらしくて…」 「そこまでやるかねまったく…」 「そういやボス、妙な少女が1人いたんですけど」 「妙な少女?」 「ええ、さっきから自分は関係無いの一点張りで…。 その割りに自分の本名とかを言わないんですよ。 戸籍にも載ってないみたいだし…」 「記憶喪失じゃないのか?」 「いえ。 7号の見立てだと違うそうです」 「なるほどな。 で、それがどうしたんだ?」 「いや、ボスが相手してみてくれませんか? そういうの得意そうでしたから…」 「ようするにいたら邪魔って事か?」 「いや、そういわけじゃ…」
少女は公園のベンチに腰掛けていた。 年齢は目測10歳前後、何処かボンヤリとした表情だった。 「とりあえず俺は4号達の手伝いに戻るんで後は頼みました」 「まあそれはいいんだが…」 服装等には被っている大き目の帽子と肩から提げているポシェット以外は特に目立った点は無い。 いたって普通の少女に見えた。 だがボスは少女に何か引っかかるものを感じていた。 (…デジャブって奴だな) そう考えて納得した後、 ボスはその少女に話しかけた。 「君、名前は何ていうんだ?」 「…」 「黙ってちゃわからんだろうが…。 何処から来たんだ? 華代被害者なのか?」 「…私は関係ありません」 「じゃあ名前を言ってくれないか? 本当に華代被害者じゃないのかチェックするから」 「…言いたくありません」 「そうか…。 そうだったのか…」 「ええ…」 「変な名前にコンプレックス持ってるんだな?」 「違います! まあ、読みにくい名前ではありますけど…」 「何だ違ったのか…」 「…あの」 「ん? 何か話す気になったのか?」 「ハンターさんって特別な存在なんですよね?」 「まあ…、特別な能力を持ってるわけだしそういう事になるんだろうな」 「周りと違うって事、気にならないんですか?」 「ふむ、少なくともハンター達の中にそんな事気にしてる奴は1人もいないぞ。」 「え…。 何故ですか?」 「まあ別に日常生活に支障はきたさないしな。 それに自分と他人は違ってて当然だ。 「自分と他人は違ってて当然…」 「そう、その違いにちょっと変わった物が含まれていただけの話じゃないか。 気にする奴はいないよ」 「あの…」 「今度は何だ?」 「私をハンターに入れてくれませんか?」 「いきなり何をいいだすんだ? 君はハンター能力を持っているのか?」 「いえ…。 でもそれに近い能力は一応持ってます。 上手く扱えないんですけど…。 でもその能力を役立てたいんです。 だから…」 「しかしなあ…。 君にはまだ早い。 そうだな。 15年後ぐらいなら大丈夫だろ。 その間に能力を伸ばした方がいい」 「では…!」 「ああ、15年後には採用しよう。 じゃあ名前を教えてくれないか?」 「今はまだ気持ちの整理がついてないのでちょっと…。 でも2、3日したら必ず教えます。 それまで待っててください」 「わかった」
そして15年後、 「華さ〜ん、ボスが呼んでましたよ。 もうすぐ予算会議があるって…」 「あ、ありがとう睦美ちゃん。 今行く」 「あの〜、前から言ってるんですけど…。 ちゃん付けはやめてくれませんか?」 「あら、だって女の子はちゃんを付けて呼ぶじゃないの」 「だから僕達は…」 「ああ、ごめんね。 後にして。 すぐ行かなくちゃ。 まだ資料の整理が終わってないから早く用事は済ませないと…」 「随分と段ボール箱多いですね」 「まあね。 関係者全員の給料明細が入ってるから。 水野さん達が休暇中だし…」 「なるほど…。 ところで話は変わるんですけど、華さんの本名って柳だそうですね?」 「ええ、そうだけど…。 それがどうかしたの?」 「いや、何でそっちを名乗らないんだろうって…」 「真沙羅の方が愛着があるからよ。 私の人生が始まった時についた名前だから…」 「ああ、そういえば孤児院に入る以前の記憶が無いんでしたっけ。 確かそれでボスが付けたって…」 「ええ、そうよ」 「皆言ってましたよ。 『ボスにあんな凝った名前を思いつける程のネーミングセンスがあったのか!』って…」 「単純といえば単純だけどね…」 「へ? 何処が?」 「いや、こっちの話よ。 じゃあ、そろそろ行かなくちゃ…。 あ、そこ気をつけて。 そこのダンボール箱不安定に…」 「ってうわあああ!!!」 「…手遅れだったみたいね」
「で、その後63号はどうした?」 「いつもの川岸で保護できました。 87号の仕事増やしてしまった事を悔やんでたみたいで…。 すぐ100号の所で精密検査受けさせてきます」 「あいつ、また給料がとぶな…」 「いや、ガイスト02が付き添ってるから大丈夫でしょう。 それよりも給料明細なんですが…」 「どうした?」 「2、3枚足りないんですよ。 今87号が必死で探してるんですけどね」 「なら大丈夫だろ」 「いえ、それ探すためにハンター達が集まったんですが…」 「何か問題あるのか?」 「そりゃもう大騒ぎで…。 5号はドサクサに紛れて1号に接近しようとして蹴飛ばされるし…、 20号はすぐに飽きて悪戯しかけてくるし…、 77号はやっと集めた明細書の束に躓くし…、 疾風は千景と張り合おうとするし…、 6号は桃香に捕まってるし…、 どうしましょう?」 「おいおいおい…」
完 |