「華代ちゃんシリーズ」



「華代ちゃんシリーズ・番外編」
「ハンターシリーズ」
「いちごちゃんシリーズ」

作・真城 悠


ハンターシリーズ79
『がんばるケイちゃんの
就職活動』

作・yuk

俺の名前は新野……いや、いまは半田ケイだ。

俺は確かに半田だがハンターではない。

ちょっとしたミスでハンターになり損ねてしまった。

しかし俺にはさまざまな技術と比類のない能力がある。

今日も一日就職活動がんばろう。

 

 

さて、今日の仕事は……

 

 

「おーい伊奈〜どこいった〜」

「伊奈〜!」

「伊奈ちゃ〜ん!」

燈子とりくそして華代が伊奈を探していた。

「六号! どうして目を離したんだ?」

「目を離してなんかいないぞ。トイレに行きたいって言うからつれてったんだ。」

「それでなんでいなくなるんだ?」

「トイレの前で待ってたんだがなかなか出てこなくて……見に行ったらいなかった。」

「りくちゃん、どっちのトイレ見ましたか?」

「一応女子トイレのほうだけど……伊奈は普通にそっち使うし。」

「それだ。」

「十号、それだって?」

「きっと伊奈は何らかの理由で男子トイレを使用したんだ。

そして六号が女子トイレに入ったところでそこから出てきたに違いあるまい。

うむ、千景なみの名推理だな。」

「千景って推理したことあったっけ?」

「私は知りませんが……」

「だいいちその何らかの理由とか言うのがなんだか解らないじゃないか。」

「うっ! うるさい。なんだっていいだろう!」

「いや、よくねぇよ。」

「はい。よくありませんね。」

「だ〜〜〜! 大事なのは今までじゃない! これからだ!」

「熱血っぽくごまかしてるよ。」

「姿が中年だったら本当に暑苦しい方ですね。ほかの『華代』もたまにはいいことするんですね。」

どうやらこの華代はまともな奴のようだ。

「うるさいうるさいうるさいうるさい!」

「で、常に先をみる燈子さんはこれからどうしようって言うんだ?」

「……千景でも呼ぶか?」

「だから千景は推理じゃなくて専ら火力で事件解決をするんだって。それにいま疾風と鬼ごっこしてるし。」

「鬼ごっこ……楽しそうですね。」

妙なところに食いつく華代。まともでもないのかも知れない。

「じゃあ六号! お前はどんな案があるというのだ!」

「う! ……それは」

「ほかの『華代』を呼び出しましょうか? 20人から召集できますが……」

「「!!!!!……それだけはご勘弁を!!!!!」」

「そうですか……」

「ていうかお前そんなにえらかったのか……」

「はい。私はこのあたりのチーフやってますから。」

「そうなのか……」

「苦節○十年。ひたすら依頼をこなしてやっとこの地位までとどきました。」

「お前……何歳だよ。」

「四十……じゃなくて! 私はまだ9歳です。」

「(こそこそ)四十代って俺より上だな。」

「(こそこそ)いまさらながら『華代』のすごさを思い知ったよ。」

「何はなしてるんですか! 早く伊奈ちゃんを探しましょう!」

そんな時後ろから声がかかった。

「何かお困りかな?」

「誰だ?」

「どちら様でしょう?」

「あ! お前は!」

そこにはりくや華代とそう年の変わらない少女がいた。

「フフフフ。そう俺こそが……」

「歓迎会のときのあの芸。ものすごくよかったぞ! 続きはいつだ?」

「続きはまたの機会に……って今はそんな話をしている場合じゃない!」

「華代、あいつ誰だ?」

「私も知りません。誰なんですかりくちゃん。」

「ああ、これは半田ケイっていうんだ。この前から組織に居候してる。」

「へ〜。俺は半田 燈子、ハンター10号だ。君も私の生徒になるか?」

「いえ、こう見えても博士号持ってるんで。」

「よろしくね。ケイちゃん。一緒に遊びましょう。」

「いや、俺はお前に変えられたんだけど……しっかり歓迎会にも参加してたじゃないか。あの一発芸は一度見たら忘れられないぞ!」

「いえ、わたしはその子とは別な真城 華代です。……何やったのよ……一発芸って……」

「別とかあるの!? ところで君、俺元に戻せない?」

「そこまで強力な力があったら無理です。

私の専門は入れ替えですので……ほかの男性がいればできますが……」

「よし! 次までに探しておくからそのときはよろしく。」

「解りました。でもつぎいつ来るか解りませんよ。私こうみえて結構忙しいですし。」

「それなら俺もバイトのないときはりくと伊奈と一緒に遊ぶことにする。それならいつか会えるだろう?」

「そうですね。」

「おい! いつまで黒い取引してるんだ?」

「あ、すまんすまん。それでな、この俺がさまざまな技術をもって伊奈とやらを探し出してやる。

その代わりお前の教室で講師のバイトさせろ。」

いきなり指をさされた燈子。

「む、ここしばらくやっていなかったんだが……いいだろう。しっかり働いてくれよ。」

「了解だ。」

「ところでケイ。お前カフェで働いてなかったか?」

「あぁ。ドジなウエイトレスはうけると聞いていたのでがんばって演じていたんだが……」

「それで?」

「さすがに会計3桁間違えたまま領収書出したのはやりすぎた。」

「クビか……」

 

ここは伊奈がいなくなったトイレ

「操作の基本は現場百篇といって必ず犯人は現場に証拠を残すものなんだ。」

「いや、犯人って……」

「でも私たちが男子トイレの中にいるってなかなか変な場面ですよね。」

「いや、お前以外は元男なんだが……」

「それなら私も昔は……」

「「「え!?」」」

「いえ!……私は元からかわいい9歳の女の子ですよ。」

なぜかあわてる華代。

「とにかくまずは調べましょう。」

 

「あ!これは!」

「なんだ? 何か見つけたのか?」

「水がはねてる。手を洗ったあと拭かずに出て行ったのだろう。」

「伊奈〜! あれほど手を洗ったあとはきちんとハンカチで拭きましょうっていったろうが!」

「(こそこそ)お母さんですね。」

「(こそこそ)うん。お母さんだな」

「(こそこそ)完全に母親だ。」

「そこ! 何をごちゃごちゃいっとるか!」

「「「すいません。せんせい」」」

「まったく。伊奈の奴。見つけたら説教だな。」

「やっぱりお母さん……」

「ん?」

「「「すいません」」」

きついにらみに思わず謝る三人。

「ほかに手がかりはないか?」

「あ! ここに足跡がある。」

「この大きさからいって伊奈に間違いないな。」

「よし。追いかけてみよう。」

 

足跡を追いかけて行くと公園に出た。

「伊奈の奴、なんでこっちの公園にきたんだ? いつもの公園と真逆じゃないか。」

「きっとたまには気分を変えたかったのでしょう。」

辺りを見回すと一人の男がいた。

「あれ? 黒影じゃん。」

「あ……」

「六号知り合いか?」

「ああ。というかハンターだぞ。96号。臼井 黒影」

「え? そんなのもいたような……いなかったような……」

「実はかなりの古参なはずだけど……久しぶりだな。この前の六号会以来か。」

「え? は……」

「りくちゃん六号会って何ですか?」

「六号会っていうのは一の桁が6のハンターで結成された会で……まぁ、特に何やるわけでもないが……」

「何もやらないのに集まるのか……」

「もう59年目を数える由緒正しい会なんだぞ。」

「そうなんですか……」

「あれ? でもこの前の会で女になってなかったか? 半田 黒子って。」

「あの……それは……」

「少々お待ちください。」

そういって懐から手帳を取り出す華代。

「あ! はい。 96号さんですね。 確かに撃墜マークついてます。」

「撃墜って……実はハンター狙ってたのか?」

「聞かなかったことにしてください。それにしても男に戻ってるっておかしいですね。」

「じつは……」

「解りました。えい!」

華代が手を振ると96号は女になった。しかしあまり見た目の変化はない。

「あ……ああ……」

「手帳に書かれていることが間違ってるなら正しくすればいいわけですね。

やっぱり発想の転換って大事ですよね。やっぱり間違いを正すのは大事ですね。

それではまた!」

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「って華代! これ華代ちゃんシリーズじゃないから。ハンターシリーズだから。それで終わるなよ。」

「あ! そうですね。では行きましょう。」

去っていく四人組

「……何もいえないって悲しいな……」

ひとりたそがれる96号

 

「おーい! 伊奈〜!」

「伊奈ちゃ〜ん!」

「おい! あれ伊奈じゃないか?」

「あ! ホントだ!」

「オ〜イ! 伊奈!」

手を振る燈子

「あ! ママ……じゃなくて燈子先生。」

「(こそこそ)いまママっていったぞ。」

「(こそこそ)いたいけな子供になに教えてるんでしょうね。」

「(こそこそ)きっとそういうプレイがすきなんだよ。」

ガン!

「いっ!」

「そういうプレイって何だ!」

「……聞こえてた?」

「おう。」

「とーこせんせー!」

駆け寄ってくる伊奈。

「あ! 伊奈〜!」

燈子も駆け寄る

そして……

ザシュッ!

いきなりナイフできりつけてくる伊奈

反射神経で何とかよけたが燈子の頬からは少し血が流れた。

「うわぁ。先生の血ってきれいだねぇ。」

「……伊奈……そのナイフどこで拾った?」

「そこに落ちてた。」

「何で俺を切りつけようとする?」

「先生の血が見たかったから。」

平然と告げる伊奈

「子供って残酷ですからね。」

「最近の子は切れるっていうしね。」

かなり大人な反応をするどう見てもナイフを持ってる少女と同じくらいの少女二人。

「先生のきれいな血。私に見せて(はぁと)」

「な! ま! ちょっ!」

有無を言わさず切りかかってくる伊奈

カキィィン!

そのときケイが横からナイフで伊奈のナイフをはじいた。

「大丈夫かい?」

「あ! すまん。恩に着る。」

「…………」

今にもなきそうな伊奈

「ごめんよ。お嬢ちゃん。でもね。かわいい女の子がそんなもの持っちゃいけないよ。」

「……す……」

「す?」

「スッゴーイ! おねぇちゃん今のどうやったの?」

「え? 今の? ええとね、相手がナイフをこうやったときに……」

 

 

 

 

 

「ケイはどうしてる?」

「17号と鬼ごっこしてます。」

「ふーん。子守に落ち着いたのか。」

「いえ……正確には殺人鬼ごっこなんです。」

「殺人鬼ごっこって……」

「ケイが17号に自分の持ちうる限りのナイフの技術を教えてしまって……」

「それで?」

「17号は元のセンスを取り戻したばかりか昔よりも強くなってしまって……」

「そうか……成長期だからまだまだ強くなるな……」

「それでケイを練習相手にいろいろやってて……つかまったら多分死にます。」

「子供は残酷だからな……」

「ちなみに燈子は伊奈を抑えるための特訓を始めたので教室再開は見合わせるそうです。」

「暴動が起こらないことを願うばかりだな。」

「人気ですもんね。」

「まぁ17号には悪いがケイを呼び出せ。」

「17号の肩を持つんですか……それで用件は?」

「この前リカバリーになずなを向かわせた学校があったろう?」

「はい。ケイが共学を男子校にしてしまったとこですね。」

「見事になずなが失敗してもともと男だった奴だけを女にしてしまったらしい。」

「ドジっ子の面目躍如ですね。」