「華代ちゃんシリーズ・番外編」 「ハンターシリーズ」 「いちごちゃんシリーズ」 ![]() 作・真城 悠 |
ハンターシリーズ85 『それいけケイちゃんの 就職活動』 作・yuk |
俺の名前は新野……いや、いまは半田ケイだ。 俺は確かに半田だがハンターではない。 ただいま仕事捜索中だ。 しかし俺にはさまざまな技術と比類のない能力がある。 今日も一日就職活動がんばろう。
「う〜ん……どこかにいい就職情報ないかな……」 ケイは悩んでいた。 「そろそろ働かないと生活費がそこをつくんだけどな……」 しかもかなり切実な問題らしい。 「あれ? ケイちゃんこんなところにいるなんてめずらしいね。」 「五号か。俺がここ(組織の廊下)にいるのがそんなにめずらしいか?」 「いや、そうじゃなくてこんなトコ(話の冒頭)にいるのがめずらしいって……」 「そっち!?」 「いや、別にいいんだけどね。ところでケイちゃん、こんなのあるんだけど行ってみない?」 五号の手には何かの紙が握られていた。 「何ですかこれ……」 『いちごちゃんファンクラブ 会員募集! 時に見守り時にしばかれるそんな素敵な生活してみませんか? 会費は要相談』 「マジで何これ……」 「あ! 間違えた! こっちこっち!」 『奉仕者募集! このたび追跡者増加のため追跡者御用達茶店の増築が行われました。 それに伴い給仕の募集をしたいと思います。 お手伝いをしていただける方は追跡者御用達茶店店主、追跡者捌拾陸號、山本 春まで』 と書かれていた。 「ハンターカフェのアルバイト募集要項だよ。」 「へ〜! この86号ってどんなやつだ?」 「さぁ? 俺もよくわかんない。けど確かカタカナがまったくだめだって聞いたことがある。」 「それでこの文章か……まあとりあえず行ってみるよ。 さんきゅ。」
ケイがカフェにいくとなずなともう一人女性がいた。 「それではなずなさんよろしくお願いしますね。」 「はい! 解りました!」 「……なずな……ここで働くのか?」 「あ! ケイちゃん。そうだよ。ここの制服一回着てみたかったんだ♪」 「……ここの店大丈夫か?」 「ひっどーい。それってあたしが転んでお皿割ったり飲み物お客さんにかけたりしそうってこと?」 「そうじゃないのか?」 「いくら私でもそんな解りやすいドジしないわよ! お店全壊させることはあるかもしれないけど……」 「余計悪いわ!!!!」 「あの……」 なずなと話をしていると横から女性に声をかけられた 「あ! すいません。」 「いえいえ、お話中悪いのですが、それ……」 女性はケイが手に持っている紙をさした。 「お手伝い希望の方ですか?」 「あ! そうです! まだ募集やってますか?」 「はい。あ、自己紹介が遅れました。 私、追跡者捌拾陸號、山本 春と申します。 ここの茶店の店主をやっています。どうぞ『はるさん』とおよびください。」 春は青みがかった黒髪を結い上げ、和服を着て、その上からエプロンをつけた二十台前半に見えるやさしそうな女性だ。 「ご丁寧にありがとうございます。俺はここの組織に居候してます、半田ケイというものです。」 「けいさんですね。よろしくお願いします。人手不足なので早速今日から出てもらいますがよろしいでしょうか?」 「解りました! こちらこそよろしくお願いします!」 「では、これが制服、そこが休憩室および更衣室、その横の部屋は立ち入り禁止なので気をつけてくださいね。」 やさしく笑う春 「はい。わかりました。」
ハンターカフェはかなり盛況だった。
「「「すいませ〜ん! 紅茶と味噌汁みっつずつくださ〜い!」」」 「はい! ただいま!……味噌汁って……ここってカフェだよな……」
「すいません! ケーキセット28個ください!」 「多!……少々お待ちください。」
「なにがいい?」 「う〜ん……これ!」 「おまけつきお子様セットか……む! これは!」 「お決まりですか?」 「このおまけつきお子様セットとコーヒーを頼む。」 「お子様セットのおまけはななにしますか?」 「えっとねぇ……」 「きつねのフォルくんでたのむ」 「え? こっちの鎌いたちのまーちゃんがいい!」 「いや、フォルくんだ!」 「まーちゃん!」 「両方お持ちします……」
「あの……注文なんですけど……誰も聞いてない……」
上の客誰がだれか当ててみよう!(笑
「きゃ〜!」 「どうした? なずな? やっぱり転んで皿割ったか?」 「え……えと、お皿は大丈夫なんだけど……」 「だけど?」 「テーブルが壊れちゃった。」 「……どうやったらこけてテーブル壊せるんだよ……」
ここは休憩室、ケイとなずなは春にテーブルのことを報告に来た。 「すいません! 店長さん!」 「『はるさん』です。」 「え? あの店長さん?」 「『はるさん』です。」 「あの店ちょ…… 「『はるさん』です。」 壮絶な笑顔で迫ってくる春。 「……はるさん。」 「はい? どうかなさいましたか?」 「実はなずながテーブルをひとつ壊してしまったらしくて……」 「テーブル? ってなんですか?」 「へ?」 「すいません。私片仮名ぜんぜん駄目で……」 「テーブルっていうのは机のことだよ、はるさん。」 「あ! いちご、お前もここで働いてたのか?」 「ああ。人手が足りないときたまに手伝ってるんだ。疾風もやってるぞ。」 「机をですか……仕方ありませんね。」 「仕方ないのか……」 「おそらくあたしのドジによる損害は経費で落とせると思うので……」 「なずなのドジって必要経費だったの!?」 そのとき店のほうから疾風が走ってきた。 「おい! 大変だ!」 「疾風、どうした?」 「迷惑な客がウエイトレスたちを襲っている。」 「まぁ! 給仕さんたちをですか? それは大変!」 「とにかく行ってみよう。」
「さあウエイトレスさんたち! ぽっくん腕の中に飛び込んでおいで! ブヒャヒャヒャヒャ!」 そこにいたのはデブヲタ……もとい64号だった。 「何であいつが……女性恐怖症になったはずなのに……」 愕然とするいちご 「どうやら復活したみたいだな……今度はウエイトレスか……」 「おぉぉぉ! そこにいる子達こっちへおいで! ぽっくんがかわいがってあげるよ! ブハハハハ!」 「なんだ? なぜか背筋に寒気が……」 「あたしもあの人には近寄れません……」 「どうしよう……何か手を打たないと……」 「私にお任せください。」 「「「「はるさん!」」」」 「大丈夫なんですか?」 「私だって伊達に店長やってるわけじゃありませんよ。」
春は一人で64号のもとへといった 「こんにちは。」 「おぉぉぉぉ! 和服だ! しかもうなじが! いいねぇ!」
「だいじょぶなのか? はるさん。あんなののあいてさせて……」 「う〜ん……自分で大丈夫って行ってたけど……危なくなったら助けに入ればいいじゃないか?」 「それもそうだな。」
「ありがとうございます。これはサービスです。」 「ん? 何カナ?カナ? ケーキ? ブヒヒヒヒ」 「はい。どうぞ。私の手作りです。」
「はるさん何してんだ?」 「あんなやつにサービスなんて……」 「あたしにはとても無理です……」
「おぉぉぉ! 美女の手作り!! 早速いただこう。……しょっぱ!! 何だこれ!? ケーキがしょっぱいって何だ!?」 「あ! すいません。考え事しながら作ってたらあなたが帰ったあとまく分の塩が入ってしまったみたいです。」 「ん? 今なんかいったか?」 「いいえ?」 やさしく微笑む春 「とにかくぽっくんはものすごく不機嫌なのだ! この責任どうとってくれる!?」 そういって暴れだす64号
「おい! 助けに行ったほうがいいんじゃないか?」 「そうだな。いこう!」 「その必要はないよ。」 「「「「ボス!!」」」」 「64号がまた脱走したと聞いて駆けつけてきたんだが……あいつも運が悪い。まさか春にちょっかいをかけるとは……」 「それってどういう意味ですか?」 「見てれば解る。」
「ぶひー! ぶひー!」 暴れる64号 「こんなところではほかのお客様に迷惑です。少々奥の方へいらしてください。」 そういって64号を奥に連れて行く春。 しばらくがたがたという音が聞こえた後に64号が走り出てきた。 「ぶ、ぶひっ! 失しつれいしましました!!!!!」 「またいらしてくださいね。」 あとにはやはりやさしく微笑む春のみが残された。
「「「「何があったんだ!!!!????」」」」 「知らないほうがいいこともこの世にはあるんだ。」 「はるさんって何者!?」 「あいつは昔最強といわれたハンターだよ。ここの店長になる前は25年連続で華代被害阻止・修復率NO1の座を誇っていた。」 「25年ってはるさんってそんなに年取ってるんですか?」 「ああ、春は見た目の倍もしくは三倍もの……!!!」 そのときいきなりボスの動きが止まった 「首領さん? 何かいいましたか?」 声のほうを見るとやさしく微笑んでいる春がいた。 「女性の年をバラすなんてこと、まさかしてないですよね?」 「も……もちろんじゃないか。」 「よかった。もしバラしたりなんかしたら私も首領さんのことバラさなければならなかったので……」 「……俺は64号の後始末をしなければならないのでもういく。バイトがんばってくれたまえ。」 あわてて逃げていくボス。 「皆さんもお仕事頑張ってくださいね?」 やさしく微笑む春。しかし今はその笑顔がかなり恐ろしく見える。 「「「「はい!!!!」」」」 背筋に寒さを覚えつつ四人は仕事に戻るのであった。
ようやく一日が終わりケイとなずなは帰る準備をしようとしていた。 「ふー終わった。」 「楽しかったね。ケイちゃん。」 「俺はお前のドジのせいで気が休まらなかったけどな。」 「え〜〜!? あたし今日お皿一枚も割ってないよ?」 「……皿の変わりにことごとく店が壊れてることを忘れるなよ?」 「まぁそれはそれとして……じゃ、ケイちゃん着替えよう?」 そういうとなずなはケイを押して更衣室に向かった。 「流すなよ……ってこっちは更衣室じゃなくて入っちゃ駄目っていわれてた……」 「え? あ! ほんとだ。間違っちゃった。てへ♪」 「はるさんに怒られても知らないぞ。……んこれは……」 「え? これって……」 「けいさん? なずなさん?」 そのとき後ろから声をかけられた。 「「はっ、はるさん!」」 そこにはいつものやさしい微笑みを浮かべた春がいた。 「ここで何をしているんですか?」 「い……いえ、なんでもありません。」 「あたしたちは何も見てません!!」 「そうですか。それはよかった。」 「「ほっ」」 見られてなかったのか、と安心するケイとなずな。 「ただし……」 「「え?」」 「ここのことをほかの人にバラしたらあなた達のこともバラさなければならなくなるので気をつけてください。」 「お……俺達のことをバラすって……ど、どんなことをですか?」 「あ、言い方が悪かったですね。やっぱり片仮名というのは駄目ですね。」 「え? それってどういう……」 「もう一度いいます。ここのことをほかの人に露出(バラ)したらあなた達のことも解体(バラ)さなければならないので気をつけてください。」 いつもどうりのやさしい微笑み。しかしその微笑がケイとなずなには鬼に見えたという。
「ケイとなずなが二人して引きこもってるのですがどこにいったか知りませんか?」 「……春だな……」 「はるさんがどうかしたんですか?」 「いや、なんでもない。」 「集団性転換事件が起こったので呼び出したいのですが……」 「いや、俺からも頼むから今だけはそっとしておいてやれ。」 「そうですか。」 「ケイ……なずな……かわいそうに……」 |