「華代ちゃんシリーズ」


掲示板de華代ちゃん!
作・真城 悠


掲示板de華代ちゃん・シリーズ「無人島」(2002.9.20.)


 こんにちは。初めまして。私は真城華代と申します。

 最近は本当に心の寂しい人ばかり。そんな皆さんの為に私は活動しています。まだまだ未熟ですけれども、たまたま私が通りかかりましたとき、お悩みなどございましたら是非ともお申し付け下さい。私に出来る範囲で依頼人の方のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。どうぞお気軽にお申し付け下さいませ。

 さて、今回のお客様は…。


「はあ・・・なんてこった」
 男は途方に暮れて座り込んでいた。
 その衣類はボロボロになってあちこちが破れていた。もう何日も風呂に入っておらず、空腹も限界に達していた。
 それもそのはずである。
 彼は無謀な冒険旅行の果て、いかだで大洋に漕ぎ出し、無人島に流れ着いてしまったのだ。
 もう何日こうして過ごしただろうか・・・一週間や10日は過ぎているはずだ。
 彼は冒険野郎にしては計画性が無く、日付の記録もしていなかったのだ。
 万策尽き果て、こうして空を眺めるしかなくなってしまった。
「おじさん」
 ああ・・・もう幻聴まで聞こえてる・・・。
「おじさんったら!」
 ・・・?
 何だろう。この女の子は。幻覚にしちゃハッキリしてるな。
「どうも。私はセールスレディの真城華代と申します。ハイこれ」
 と言って名詞を差し出す。
「あ・・・君・・・」
 どうやってここに・・・?という言葉がすぐには出てこなかった。余りの非現実的な光景に唖然としていたのだ。
「えーと、何か困った事があったら言ってください。“解決”します」
「た、助けてくれえ!」
 堰を切った様に一気に喋り始める男。その話は取りとめが無い。誰もたどり着けそうにない絶海の孤島に小学校低学年程度の女の子がいる不思議など後回しである。
「と、とにかく!近くにやってきた船もこっちを見向きもしやがらねえんだ!どんなに叫んでも声なんか届かないんだよ!」
「ふむふむ・・・よーし分かった!何とかしましょう!」
「へ?・・・いやだからその・・・ん?・・・な、何だ?・・・何だ・・・これは?・・・・あ、あ・・・あああっ!」


 その後、無人島に漂着していた女性が無事に救出されたらしいです。まあ、基本的に高い高い女性の声の方が遠くまで届きますからね。
 しかし、船員さんに言葉の通じる人なんていたのかしら?まあ、色々あったかも知れませんけど多分助かったんだからいいですね。

 いやー、いいことをした日は気分がいいわ!それじゃまた!


掲示板de華代ちゃん・シリーズ
「ハンター・番外編」「準備不足」(2002.9.22.)


 その女子高生は呆然としていた。
 自らの変わり果てた姿に現実感を喪失していたのだ。
 な、何だ?何なんだ一体?
 自分は確かに男だったはず。それなのにどうしてこんな・・・身体が女に・・・なった上に女子の制服まで着せられているんだ???
 全く訳が分からなかった。
 がらり!と重い引き戸が開く音がした。
「ひっ!」
 反射的に声が出てしまう。
「あー、慌てんでもいいぞ」
 妙な声だった。
「落ち着いて落ち着いて。すぐに行くから」
 その光景もまた非現実的であることに掛けては全く劣らないものだった。
 なんと、可愛らしいメイド衣装の少女が、重そうな鞄をえっちらおっちら抱えてやってきたのである。
 どすん!とその体育倉庫のマットの上に大きな荷物を置くメイド少女。
「あの・・・」
 制服少女は自分の声に違和感を感じた。だがそんな事を気にしている場合ではなかった。
「俺はハンターだ」
 この可憐なメイド少女が自分を「俺」などと名乗るとは・・・
 恐らく現在の自分なら自我は間違いなく男なので「俺」とは名乗るだろうが、それにしても・・・
「ん?この格好か?」
 といってスカートをつまむメイド。か、可愛い・・・。
「名誉の負傷って奴だ。お前さんと一緒だよ」
 何という似合わない口調であろうか。その可愛らしい声質がまた違和感をいや増している。
「不屈の闘志で現場復帰したんだ。お前さんにとっちゃ救世主なんだから感謝して欲しいね」
「いや・・・あの・・・」
「時間が無いんで単刀直入に言うぞ。お前はさっき小学生くらいの小さな女の子に会った。そうだな」
 どうしてそんな事を知っているのか?このメイド少女は。
「名刺を渡され、なんのかんのと話している内にその姿にされていた・・・そうだな?」
 メイド少女の言う通りだった。
「俺たち「ハンター」組織はそれを撲滅すべく活動する秘密組織だ。すぐに戻してやるから心配するな」
「え・・?でも・・・」
「分かってるよ。じゃあなんで自分は元に戻らないのかって言いたいんだろ?・・・仕方ないんだ。組織の総力をあげても俺はもう元には戻れないらしい。今のところはな」
 無茶苦茶な話だが、一応筋は通っている。
「いいか?もう女の身体には未練は無いか?」
 メイド少女が軽くにやりと笑った次の瞬間には女子高生の制服が変形を始めていた。スカートはズボンになり、ブラジャーはただのシャツになる。そして、豊かな乳房は薄い胸板になり、髪の毛がスポーツ刈りに戻っていく。
「あ・・・あ・・・」
 すっかり元の健康な男子校生がそこにいた。
「よし、これでいいだろう。もう二度と奴には会うなよ。そのコツは・・・」
「か、可愛い・・・」
「とにかく名刺を受け取らないことが・・・へ?」
「な、何て可愛いんだ・・・」
 人気の無い体育倉庫の中で目をぎらつかせた男子校生が可憐なメイド少女に迫る。
「・・・お、おい・・・お前・・・」
「君・・・」
「ま、まさかお前・・・よ、よせ!」
 漸く身の危険を察し、荷物を置いたまま後ずさるメイド少女・・・となってしまっているハンター1号。
「ま、待って!」
「きゃああっ!よ、よせ・・・めや・・・やめてぇっ!あ・・あ・・・あああっ!」


「あいつはどうしてるんだ?ミッションは成功したんだろ?」
「ええ。みたいですけども、本部に帰ってくるなり部屋に引き篭もっちゃいまして・・・何かあったんでしょうか」
「うーん、微妙な年頃だからなあ」
「いや・・・元は中年男でしょ?」
「まあそうなんだが・・・とりあえず労働基準監督所には黙っとけよ。未成年者を働かせてるとなったらマズイ」
「何だかどんどんせこくなってますが・・・本当に秘密組織なんですか?」

 対真城華代秘密組織「ハンター」。果たして華代を倒す事は出来るのか?
 彼らの・・・一部彼女たちの・・・戦いはまだまだ続く。