ハンターシリーズ01
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俺は「ハンター」だ。 不思議な能力で “依頼人” を性転換しまくる恐怖の存在、「真城 華代」の哀れな犠牲者を元に戻す仕事をしている。 最終的な目標は、「真城 華代」を無害化することにある。 とある事件――というか「華代被害」――に巻き込まれた今の俺は、15〜6歳くらいの娘になってしまっている。 華代の後始末の傍ら、なんとか元に戻る手段も模索している。 さて、今回のミッションは…… 彼女は大きなリュックを背負っていた。 自分の身体の体積ほどはありそうに見えるそのリュックを、よっこらしょ……とばかりにその場に下ろす。 「ふう……やっと見つけたぞ。手間かけさせやがって」 その声は張りがあり、爽やかに響いた。 長い髪を後ろで1つにしばっている。Tシャツにジーンズというカジュアルないでたちで、その健康的な魅力は見るものを魅了する。 「あ、いいから落ち着いて。そのまま、そのまま」 彼女の目の前には、ひとりの人物が座り込んでいた。 「ふん……チアリーダーの衣装か――」 その場にいたのは、日本では「チアガール」と呼ばれることの多い、原色のミニスカートに身を包んだ少女である。 「まあ、気持ちは分かるが……とりあえず脚を直せ」 “体育座り” 状態になっていたその少女は、スカートがまくれ上がり、下着が丸見えになっていた。 「ふん、ショックで口も聞けないか……無理も無い。大方、誰かを『応援したい』とか言ったらチアリーダーにされたんだろ?」 ピクッ――と肩を震わせ、少女が反応した。 「やっぱりそうか……相変わらず安易な奴だ。心配するな、クラスメートは全員元に戻しておいたぞ」 「お、お姉さんは…………一体……?」 “お姉さん” と呼ばれてどきりとする。 「いいからっ! ……戻すぞっ」 彼女の掛け声とともに、見る見るうちに平凡な男子中学生へと変わって……いや、「戻って」いくチアリーダー。 「あ……あ…………」 「――じゃ、そういうことで」 人間災害「真城 華代」の被害にあった対象者を“還元”し、リュックをかつぎ直してそそくさとその場を去ろうとする。 何か嫌な思い出でもあるのだろうか……? 「……お、お姉さんっ」 その呼び方は止めろってのに…… ちょっぴり頬を赤くして振り返る。 「何だよ……?」 「せ、せめて名前だけでも――」 名前――名前ねえ……まさか女性名を名乗るわけにも行かないし…… 「名前は……あ〜名前は、その、は……『はんた・いちご』だ」 無茶苦茶に安易である。「ハンター、1号」をそのまま読んだだけだ。 自分でも恥ずかしくなったのか、何も話さずにリュック少女――いちごはその場から駆け出した…… 少女は「本部」の廊下を歩きながら、何度も悪態をついていた。 くそっ、あのどアホ名刺屋め……。 その手には可愛らしいピンクの紙片が握られていた。 そこには「半田 苺」の文字がある。 誰がこんな可愛らしいフォントにしろと言った…………もう泣きたい気分だった。 「おい、1号」 「いちご」と呼ばれたと思い、彼女はビクッと身をすくめる。 「お前……まさかその格好でここまで歩いて来たのか?」 「へ?」 同僚の言葉にふと後ろを振り返ると…… 「…………」 背中側に女性の下着であるスリップが、でろ〜んとはみ出していた。 「またあいつは引きこもってるのか?」 「はあ……何だか改名したとかで――」 「スタイルも変えたんだろ?」 「ええ。いつまでもメイドの格好だとロクなことが無いとかで――」 「いいから仕事させろよ。人手不足なんだから……」 「……うちって何の組織なんですか?」 |
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