ハンターシリーズ02
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俺は「ハンター」だ。 不思議な能力で “依頼人” を性転換しまくる恐怖の存在、「真城 華代」の哀れな犠牲者を元に戻す仕事をしている。 最終的な目標は、「真城 華代」を無害化することにある。 とある事件――というか「華代被害」――に巻き込まれた今の俺は、15〜6歳くらいの娘になってしまっている。その上、ひょんなことから「半田 苺(はんた・いちご)」を名乗ることになってしまった。 華代の後始末の傍ら、なんとか元に戻る手段も模索している。 さて、今回のミッションは…… シューシューとスモークが炊かれている。 今まさに、ホテルにしつらえられた会場に花嫁と花婿が入場するところだった。 ……と、その時だった。スモークが止まり、会場の照明も通常のものに戻される。 「あー、はいそこまでそこまで」 そこに全く飾りっけの無い15〜6歳くらいの健康的な少女が現われる。 Tシャツにジャケット、ジーンズという、シンプルそのものといういでたちである。 とてとてとウェディングドレス姿の花嫁に歩み寄ると、 「うーん、こりゃまた随分と――」 何だか決まり悪そうにしている。何を照れているのか? 「あの……君は?」 「あー、私はその…………こういう者です」 名刺を取り出す。 そこには「ハンター 半田 苺」とだけ書かれていた。 ピンクで、しかも普通の名刺よりも一回り小さく、それでいて可愛らしいフォントなので……女子高生か、さもなくば風俗嬢のそれであった。 「……ま、まあとにかくですね、えーと――」 少し喋る度に、けんけんとセキみたいなのをするのは何なのだろうか。何やら声を出すことに慣れていないようにも見える。 「さっき、ヘンな女の子に会ったでしょ?」 「え?」 信じられない――といった表情をする花嫁。 「分かってますよ。きっとあいつのことだから…………まあいいです。すぐに戻しますから」 数分後、すっかり元の姿に戻ったカップルがそこにいた。 「……これで完了ですね」「ああ……これは――」 まだ信じられないのか自分の身体をぽんぽんと触っている神崎。女の身体に未練がある……訳ではないよな。 「あ……」 すらりとした二枚目だった花婿も、今やフィアンセの女性に戻っていた。 「万事解決ですね。それじゃ私はこれで――」 「待ってくれ!」 少女を呼び止める神埼。「……何が起こったのか良く分からないが、とにかく助かったよ」 「はあ……まあ、どうも――」 「ついてはお礼がしたいんだが」 「いいですよ別に」 どうもこの身体は身長が足りないな。それほど長身にも見えないこの対象者すら見上げてしまう。 「そうよ。遠慮しないで」 フィアンセの方も大乗り気である。「あなた……勿体無いわよ」 「……は?」 「女の子でしょ? だったらもっとおしゃれしなくちゃ!」 「いやその……私は、おと――」 「そうだ! お礼に今日のショーで使ったドレスを着せてあげよう」 「ええええええっ!?!?!」 「そうよ! 私も普段着をプレゼントしてあげるわ。それに……あなたノーブラじゃないの」 かああっ! と耳まで赤くなって胸を抱きしめるように隠す。 「いやその……これは――」 「何!? そりゃいかん。私にまかせときなさい!」 「いや……だからその……」 「さあ、こっちにいらっしゃい! 新作のウェディングドレスのモデルにしてあげる」 「え、遠慮します……遠慮しますったら、あ…………た、助けてぇえええええええ〜っ!!」 「また引きこもっとるのかあいつはっ」 「はあ」 「ミッションは成功したんだろ?」 「……みたいですね」 「何でもファッションデザイナーを助けた際に、“お礼”と称して着せ替え人形状態にされたらしくて……」 「アホくさ。……さっさと部屋から引っ張り出せ。後がつかえてるんだから」 「何ですか? “後” って?」 |
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