ハンターシリーズ03
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俺は「ハンター」だ。 不思議な能力で “依頼人” を性転換しまくる恐怖の存在、「真城 華代」の哀れな犠牲者を元に戻す仕事をしている。 最終的な目標は、「真城 華代」を無害化することにある。 とある事件――というか「華代被害」――に巻き込まれた今の俺は、15〜6歳くらいの娘になってしまっている。その上、ひょんなことから「半田 苺(はんた・いちご)」を名乗ることになってしまった。 華代の後始末の傍ら、なんとか元に戻る手段も模索している。 さて、今回のミッションは…… 彼女は料理をしていた。 ふむ……と、手に持ったレシピを元に厳密に組み上げていく。 元々一人暮らしで、料理は経験がある。 今日は休日なのでちょっとばかりチャレンジしてみたのだ。 確か物理学者のキュリー夫人は料理がでんて得意では無かったのだが、いざ始めるとその科学的態度で料理法を分析・分類し、すぐに熟練の料理人になったという。 今に至るまで理系のノーベル賞を二部門に渡って受賞した例は無い。男性ですら無いのだ。 彼女がかなり「男性的」な思考回路を持っていたのは明白だろう。 だから、俺でも出来るはずだ。 べ……別に娘になっちゃったから料理始めたとかそんなんじゃないぞ! そんなんじゃないからな! ……って、一体誰に向かって言い訳をしているのか。 ともあれ今日は組織「ハンター」の同僚が味を見に来るという。ふん、物好きな奴らだ。 男の一人暮らしの手すさびを集団で喰らってどうしようというのか。……まあ、好きにさせてやるが。 ピンポーン。「はーい」 何が「はーい」だ。アホらしい…… ほどなくして、どやどやと同僚のむさ苦しい男たちが入ってくる。 「よお! 来てやった、ぜ……?」 言葉に詰まる同僚のひとり。 そこにいる、健康的な短パンと後ろで縛り上げた髪……そしてエプロンをした少女に、一瞬心臓が止まりそうになったのだ。 「おう! その辺に座れ」 そんな彼らの気も知らず、テーブルにお皿を並べ始める。心なしか部屋の中が、小奇麗になったような……。 数人がおずおずとテーブルを囲む。だが……男の集団の中の「紅一点」に、どうもやりにくそうな表情を浮かべる。 「何だよ? 早く食え……折角用意したんだから」 「じゃ、じゃあ……」 彼らは皆、一斉にスプーンをその口に運んだ。 「今度の引きこもりの原因は何だ?」 「はあ、何でも1号の部屋に料理を呼ばれたらしいんですよ」 「それで? マズかったのか?」 「いえ。そりゃもうものすごく美味かったらしいですよ」 「それでどうしてこうなる?」 「はあ、それであまりの美味さに激賞を繰り返して……その――」 「いいお嫁さんになれるぜ、……とか言ったんだろ」 「みたいですね」 「いいから早く出させろって。就業規則作るんだから」 「うちって監督署管理下ってホントなんですね……」 |
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