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ハンターシリーズ04
『いちごちゃん電話する!』

作・真城 悠

 

 俺は「ハンター」だ。
 不思議な能力で “依頼人” を性転換しまくる恐怖の存在、「真城 華代」の哀れな犠牲者を元に戻す仕事をしている。
 最終的な目標は、「真城 華代」を無害化することにある。
 とある事件――というか「華代被害」――に巻き込まれた今の俺は、15〜6歳くらいの娘になってしまっている。その上、ひょんなことから「半田 苺(はんた・いちご)」を名乗ることになってしまった。
 華代の後始末の傍ら、なんとか元に戻る手段も模索している。

 さて、今回のミッションは……


 いちごは何の気なしにその電話を取った。
「重大な話がある」
 その同僚は開口一番、そう言った。
「何だよ……ウチの組織にそんなものあるのか?」
「お前……1号か?」
 その同僚は、彼女の良く知る奴だった。

 ……くそっ。まだこの声に慣れきってないのに、痛いところをつきやがる。

「……ああ。そうだけど」
「単刀直入に言うが――」
「勿体ぶらずにさっさと言えよ」
「実は…………言いにくいことなんだが――」
「何だよ?」
「お前……綺麗だよな――」
「…………」
 い、いきなり何を言い出すんだこいつは?「……ば、馬鹿言うな。切るぞ」
「切るな! 大事な話なんだ!」
 声に力がこもる。

 な……ど、どうしてこんなに胸がドキドキしてるんだ? そんな馬鹿な……

 思わず手を顔に当ててしまう。真っ赤に紅潮しているのが分かる。
 お、落ち着け。落ち着くんだ。「そんな話……急に言われても――」

 な、何を言葉に詰まってるんだ俺は!? 相手にするな!

 そう自分に言い聞かせているのに、受話器を置くことが出来ない。
「いや、間違い無い。お前の方が綺麗だ――」

 ……? 「お前の方が」?

 いちごの表情が曇った。……それは誰かと “天秤” に掛けてるってことか?
 ふつふつと怒りが湧き上がってきた。
 ……それって失礼な話じゃないか。大体こんな大事な話を電話で済ませようなんて、人を馬鹿にしている。
 と、ここまで思って、ハッ! となる。
 こ、これはまさか…………嫉妬?

 ど、どうして俺がこんな感情を…………ま、まさか心まで女に……

「……だから頼みがあるんだ」
 ま、まさか……
「な、何だ……よ」
「だから…………交換して欲しい」

 ……? ……「交換」?

「だからさあ、ボスが綺麗好きなのに『まな板』を洗うのを忘れてたらしくってさ。……お前のところのって綺麗にしてるじゃん。取り替えておいてくれないかなあ。……ん? どうしたんだ? おい――」


「今度の引きこもりの原因は何だ?」
「はあ、誰も知っている人間がいませんで……」
「しかもハンター5号が引っかき傷で半殺しにされていたらしいんだが…………誰の仕業なんだろうか」
「さあ、私には何とも――」
「とにかくあいつの保険証、更新させとけ」
「それくらい組織がやってくださいよ」

「事務員が休みなんだよ」


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