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ハンター・シリーズ27「ハンターガイスト」より続く)

「なんであたしが女じゃいけないのよ。いちご…ううん。1号や6号。ましてや寿退職した2号の例もあるじゃない」
ハンター秘密警察。わずか十名からなるこの部署はハンター組織内の内部粛清が目的の部署である。
その所長室に28号は抗議に出向いていた。


ハンターシリーズ28
(ハンターガイスト後日談)


『小さな女神』

作・城弾

 「わからんやつだな」
 書類から目を上げその鋭い眼光を若干緩め呆れたようにデスクの前の大男を見上げる所長。ハンターガイスト。
 「いいか。あの連中は任務遂行中に被害にあった。いわば名誉の負傷という奴だ。まぁ死んでないから殉職とはいえないがそれに近い扱いかもな。
だから1号などはみんなに尊敬され敬われている」
 それは単にアイドル化しているだけだと思われるがこの場には無用の突っ込み。
 「だがお前のは違う。その立場を利用しての女性化だ。それもおのれの欲望を満たすための。そんな奴をのさばらせて示しがつくか。裏切りは認めん」
 顔を真っ赤にして耐えている28号。だが正論なので言い返せない。やがて彼の目に涙が滲む。
 「石頭!!」
 彼は悪態をつくとレースのハンカチで涙をぬぐいながらその場から走り去る。

 「28号はどうした?」
 ボスは部下に尋ねた。
 「はぁ…部屋ですすり泣いています」
 「またか。今度はなんだ?」
 「なんでもハンターガイストに詰め寄ったはいいが逆にあしらわれて帰ってきての悔し涙とか」
 「あいつも変わり者だな。女にされた職員は多々いるが逆に女になりたがる奴なんて」
 「変身した姿は難しい年頃だったようですからね」
 「いいから出せ。不要物の撤去にあいつの馬鹿力が必要なんだ」

 とある高校。共学校だがその少女たちは三人でグループを形成していた。帰るために下駄箱で待ち合わせていた。揃ったので校門に向かう。
 「…双葉…今頃どうしてるかなぁ」
 空をポツリと見上げてポニーテールの少女。由美子は寂しそうに言う。
 「さよならもなかったもんね。ひどいよね」
 ツインテールの小柄な少女。瞳が憤慨する。
 「南米かぁ。何か『組織』の別計画を追って転校したという話だけど元気かなぁ」
 そんな眉唾物の理由を信じたのかと聞きたくなるショートカットの沙織がつぶやく。
 彼女たちにプラスして双葉で仲良し四人組だった。それはそれは仲がよかった。
だがある日突然にさよならもなく「双葉」は姿を消した。
 別れがつらいから黙って転校したという話であった。
 もちろん「組織」がフォローのために書いたシナリオである。
 南米どころか割と近くにいる。今も…

 「由美子。瞳。沙織。元気そうね…」
 28号は遠くから彼女たちを見ていた。ここは橋の上。彼女たちの通学路。
夕焼けを見ているように見せかけて仲の良かった少女たちの姿をこっそり見に来ていたのだ。
 彼はその大柄な体が小さく見えるほどしょげ返りため息をついた。
 「……帰りたい……あそこに…」
 彼は目を閉じてすすり泣いた。

 「おねーちゃん」
 少女たちはいつのまにか現れた小学生くらいの女の子に驚いた。自分たちしかいなかったはずなのに。
 沙織がしゃがんで目線を合わせる。
 「どうしたの? 迷子になっちゃったの?」
 「違うよ」
 「じゃあ何かな」
 沙織は子供好きだった。子供の高さに合わせてしゃがむだけでもそれがわかる。
 「セールスレディーだよ」
 その女の子は一枚の名刺を差し出した。それにはただ
 「ココロと体の悩み 解決します 真城 華代」とだけあった。
 「しんじょうかよちゃん?」
 「ましろ、だよ」
 「あっ。ごめんなさい」
 沙織は非を認め謝る。さして気にしてない様子の華代はにっこりと笑う。可愛い。
 「それよりお悩みありませんか? 私が解決して差し上げます」
 「悩みねぇ」
 多感な少女である。それこそ心と体の悩みなど尽きないことであろう。
 実際に由美子はダイエット中で沙織は逆にもう少しふっくらさせたかった。瞳はとにかく背の低さが悩みだった。
 だがタイミングが悪かった。否。この場合は幸運だったといえよう。
もしもそれをそのまま口にしたら最低でも瞳は背の高い男性にされてしまっていたかもしれない。
 しかしこの場で三人が考えていたのは純粋な願いだった。
 「そうねぇ。実は遠いところに行っちゃったお友達がいるのよ」
 「ふむふむ」
 なにやらメモまでしている華代。
 「出来るならその娘ともう一度学校生活を送りたいわね」
 「ちゃんと卒業までね。ううん。あたしたちがそれぞれ結婚してもずっとお友達でいられるように」
 「わかりました」
 「へ?」
 戯れというか子供の遊びに付き合うつもりで心情を吐露していた3人娘はこの幼い少女が困ってしまう前に辞めるつもりだったが予想外の言葉に唖然となる。
 「見事解決して差し上げます」

 「えっ!?」
 一度鼓動が跳ね上がった途端にそれは始まった。胸が焼いた餅のように膨らみ始めたのだ。
 「あ…ああ…こ…これは? 華代様に変えていただいたときと同じ。でもどうして?」
 大半の人間が発した恐怖から来る呻きではなく歓喜から来る声だった。
 同時進行だった。角刈りの髪はしなやかになったと思いきや爆発的に伸びていく。背中にまで達した。
 全体的に縮んでいく。筋肉が脂肪に。臀部も小さくはなっているが他に比べると縮小率が低い。
 肩幅が狭まり浅黒い肌が白く輝きだす。
 鷲鼻が低く愛らしくなり奥目がちだった目は大きく黒目がちに。厚めの唇は艶やかなピンクの小さいものに。
 この時点では210センチ。130キロの巨体はすでに154センチ41キロになっていた。
 続いて衣服だ。だぶだぶのスーツが脈動を開始した。そして下着だ。
 ブリーフは表面積を狭めすでに何もない股間をぴったりと包む。
 ランニングシャツも素材の変化を起こしながらその胸を包み込みきゅんと上向きにする。
 ワイシャツは一度ボタンが吹っ飛び反対側につきなおした。スクールブラウスへと変化する。
 ネクタイも縮み紅いリボンになる。
 ズボンは丈を縮めトンネルが融合する。膝の上を過ぎたあたりでぱあっと広がり足を空気に晒す。プリーツスカートの完成。
 ジャケットもぐんぐん縮みついには彼女たちと同じ茶色のブレザーに。
 「ああ…あああ…」
 体が変わるのを実感するたびに彼女は歓喜の声を流す。表情は恍惚としていた。まさにこの世の幸福を独り占めにしたかのようだった。
 「戻った…戻ったのね」
 甲高い澄んだ声は変身が完了したことを物語っていた。
 「でもどうして…あっ」
 旧友たちのほうを見ると彼女の小さな女神がいた。それですべて悟った。
 「由美子たちがお願いしてくれたんだ!!」

 「これでおしまいです。この道の向こうにお友達がいますよ。じゃ」
 手を振って駆けていく華代。きょとんとする瞳と由美子。
 「バイバイ。華代ちゃん」
 沙織は別れの挨拶までする。姿が見えなくなってから三人で顔を見合わせる。状況に何も変化はない。
 「やっぱり遊びだったのかしら」
 「いいじゃない。なんかちょっと双葉がかえって来る夢見ちゃったし」
 「そうね。さぁ。帰りましょ」

 「半田双葉。再び…か」
 その低い声にぎょっとなる。ハンターガイストがいつの間にかいたのだ。
 「つけていたの? 私からまたこの姿を奪う気?」
 ガイストはゆっくりと首を横に振る。
 「言ったはずだ。俺は『裏切り者』を始末する。だが今のお前は1号たち同様に不可解な力で変えられたに過ぎん。むしろ被害者だ」
 例によって芝居のように間を取る。
 「それにな…戻したくても戻せなくてな。今度はどうみても巻き込まれ型だ。依頼者が解除を望まない限り戻せない」
 「それじゃ」
 「ああ。どこへなりともいくがいい。ただ人手不足は深刻なんでな。そのままでいいからたまにはミッションに参加してくれ」
 「はい」
 今度は素直に頷けた。
 「あーっっっ。あれ双葉じゃない?」
 「まさか本当にあの子の言うとおりに?」
 帰宅のためにこの橋を通ろうとしていた瞳が素っ頓狂な声を上げる。三人が走ってくる。
 「お迎えか」
 つぶやくとハンターガイストはいずこかへと消えた。その際に彼の口元が笑みを浮かべていたのを双葉は知らない。
 「双葉―っっっ。いつのまに帰ってきていたのよーっっっ」
 三人の少女は勢い良く到着した。双葉は大きな目に感動の涙を浮かべて言った。

 「みんな……ただいま!!



あとがき


『ハンターガイスト』の後日談です。これを書いたのはやはり掲示板での反響によるところが多いです。

 掲載していただいて感想の多かったのが「本人望んでんだから別に女の子でもいいじゃないか」という声。
 最初、続編は功名心の強いハンターを組んで手柄はやるから自分はあえて巻き込まれて女の子に「戻ろう」とするものでした。
 もちろん予想外の華代ちゃんの行動で組んだハンターの方が女性化してしまうというのはお約束。
 考えていたのは34号が女性化された上に28号に対して恋心まで持たされると作者の鬼ぶりが十分に発揮された内容でした(笑)
 何をやってもうまく行かないという点で笑いを取るつもりで。
(ちなみについたあだ名が『味方殺し』)
 だけど神木さんの設定画を見てたら「なんか女の子に『戻して』あげてもいいかな」と思い今回のような後日談で。
 実は2バージョン考えていて実際に真城さんに見ていただいてこっちを後日談としましたが。

 ラストのハンターガイストの登場はあのままじゃ彼も嫌われ者で終わってしまうので。
 別に双葉が憎いわけでなく組織の引き締めのために心を鬼にしたというところです。だからこのケースでは抵触しないのでノータッチなのです。
 わざわざ出て行ったのは元に戻そうと動かないのが不自然だったから『俺は手を出さないよ』と言わせる必要があり。

 クラスメイトたちはどちらのバージョンでも双葉を女の子にするための登場。

 本当はラストで三年後にウエディングドレスを着て晴れやかに笑い結婚式を挙げている場面も入れていました。
 これは女として生きることに何の後悔もないしむしろ幸せという意味で。
ですがもうちょっとは読み手の想像する余地を残そうと思いカット。
 特殊能力はあれどもう心身ともにただの女の子だから存在意義は薄くなって退場させる目的でも入れようと思いましたが中には双葉でストーリー作ってくれる人もいるかもだし。
 宣言しますが双葉。ハンターガイストともに使用OKです。双葉はなんかさんごさんの妹分になりそうですが。
 ああ。いちごちゃんと双葉でコンビ組んでのミッションなんて面白そう。
 『女子高生』の姿が必要なミッションだろうけど見事に何の違和感も泣く女の子している双葉を見て
『とてもじゃないがあそこまで割り切れん』と思ういちごだけどしぐさから何から自分も十分に女性として問題なくなっていたことを認識して引きこもる…とか。

 今回はお読みいただきありがとうございました。

城弾


付録 「半田 双葉」設定画
イラスト 神木亨太さん