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ハンターシリーズ132
『とあるラジオ番組にて その6』

作・ELIZA

 

「はい。今週も始まりました『愛の狩人』。
お相手はこの私ラブハンターこと狩生いち子でお送りします。
なんと、今回はスペシャルです
…まあ、「裏で糸を引いている人」が違うだけなんだがな。」

プロデューサー(いち子ちゃん! そういうこと言っちゃダメ! 僕までクビになるから!)

「はいはい。解りましたよ。
さて、早速お便りの紹介をさせていただきます。
ラジオネームGood Belief to Fateさんからのお葉書。

『毎週楽しく聞いています。何回も投稿しているのですが、紹介されればこれが初めてになります。』

ありがとうございます。
今までお便りを取り上げられなかったのは申し訳ありませんが、今日のスペシャルで紹介するので勘弁してくださいね。

『最初に言いたいのですが、自分のことをラブハンターって言うのは止めてもらえませんか?』

毎回のことだがうるさいな! 止められるなら俺だって止めたいよ!

『その発音だと、彼女が「ゴカイ狩人」だと言って聞かないので。』

発音の問題!? "Lob Hunter"だってのか? "Lobworm"って言えよ! むしろ"Lugworm"だ!」

プロデューサー(いち子ちゃん!? 何でそんなに詳しいの!?)

「何でって、俺は外国語大が…」

プロデューサー(それ言っちゃダメ! 女子高生アイドルって設定なんだから!)

「…すみません。何か変な霊に憑かれていたようです。気を取り直して続き読みます。

『彼女と書きましたが、実はまだ何も進展していません。
言い出そうとしてもまともに取り合ってくれませんし…』

あら、そうなのですか。
そういう時は勇気を出してこちらからアタック! そうすれば彼女も振り向いてくれます!

『…下手にアタックするとショック死してしまいます。』

いや、アタックって、「攻撃」じゃないから! 「アプローチ」の意味だから!」

プロデューサー(いち子ちゃん! そういうコアなハンターマニアにしか解らないネタは止めて!)

「こんなの聞いてるのって、他にいないと思うんだが…すみません、次読みます。

『でも彼女は品格があるレディで、社交的で、慈悲深くて、誠実で、度量が大きくて、気前が良くて、スレンダーで、魅力的で…(以降のろけ話2分)』

で? 私にしてみればそんなの関係ないと言ったところでしょうか。
もっとコンパクトにできますよね? もう少し読みやすい字で書いてくださいね。」

プロデューサー(その口調でリスナーの心をえぐるのは止めて!)

「おい! この口調だったらいいのかよ! …続き読みます。

『長くて書ききれそうになかったので、コンパクトにしてみました。手先が器用でしょ。』

「コンパクト」の意味が違う! 字が小さすぎて肉眼では真っ黒にしか見えないから! 俺はさっきから実体顕微鏡使って手紙読んでるから!」

プロデューサー(いち子ちゃん、そこには触れないで! それが無かったらこの葉書選んでないから!)

「お前どういう基準で手紙選んでるんだ!? …では次を。

『とにかく、彼女に対する思いは抑えられないので、この前思い切ってプロポーズしたんです。』

そう、その意気ですよ!
それなら彼女もあなたの思いに気づいてくれるはずです!

『そうしたらちょうどその時とんだハンカチが飛んできまして…
その後で彼女はにっこりと笑って…』

…ん? そんな事より、臨時ニュースです。

『先程のニュースの占いコーナーで、今年一番のラッキーナンバーは24だとお伝えしましたが、「アン」を入れるのを忘れていました。』

だそうです。」

プロデューサー(いち子ちゃん、新手のえぐり方だね!)

「このニュース原稿、お前が渡したんだろうが! …では続きを。

『その後で彼女はにっこりと笑ってこう言ったんです。
「プロポーズの練習ですか? そうですよね? 女性同士では結婚できませんし。
で、お相手の殿方は誰ですか? それだけ言えばきっと受け入れてくれますよ。」』

そっち!?
あ! あはははは。私的にはお互いに愛し合っているなら同性同士でも問題は無いかと…」

プロデューサー(いち子ちゃん! フォローになってないよ!)

「うっ! でっ、では…その次を。

『で、結局彼女には思いが伝わりませんでした。』

AMに相応しい湿っぽい失恋話、どうもありがとう。
でも、こうやって葉書が届いてるってことは、葉書を書いて投稿して、番組を聴こうって元気はあるんだよね。」

プロデューサー(いち子ちゃん! 最近当たり前になってきてるけど、基本傷をえぐっちゃダメだから!)

「人を煽っておいてそういうこと言うな! …あ、1つ忘れていました。
今回はスペシャルということで、番組中でお便りを紹介された方には素敵なプレゼントがあるのでした。
ということで、ラジオネームGood Belief to Fateさんには、素敵な夫婦茶碗をお贈りしますね。」

プロデューサー(いち子ちゃん! 言ってる端から!)

「これを用意したのはお前だろうが! …すみません、ではその続きを。

『この辺でいつもは胸の話が入るのでしょうが、なぜ皆さんがそこまで胸にこだわるのか理解できません。』

はぁ…これかなりまともなのに、なんでこんなに疲れるんだろ。
そうですよね。続き読みます。

『やっぱり女性にとって大切なのはウエストですよね。』

そうですね。…嫌な予感がするのですが。

『女性のウエストはその細さもさることながらその描く曲線が…(以降ウエストの話2分)』

やっぱりそうか! どいつもこいつもこだわるな! これがなきゃまともなのに!」

プロデューサー(いち子ちゃん! それがないとこの番組の意味がないから!)

「意味がないって何だよ! 次は…やっとリクエストですね。

『そんな彼女に自分のことを解って欲しくてこの歌をリクエストします。「恋のボリ』」


プロデューサー(「鯉のぼり」ね。)
(曲が流れ始める)

「それにしても…何で「鯉のぼり」なんだ? 字も変だし…
あ! 最後に改行してる! 『「恋のボリューム80%カット」をお願いします。』だ!」

プロデューサー(うわ〜!! やっちゃったー!)


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