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ハンターシリーズ106
『本当の自分』

作・冥龍

 

僕は、最近この秘密組織『ハンター』にスカウトされた、
大神 空護(おおがみ そらもり)、ナンバーは95号。
身長190cmもあり、身体能力はそこらの特殊部隊よりも上(それには訳があるんだけど)、
一流大学卒業で、顔も綺麗に整っている。
友達にも羨ましいと言われたけど、そんな僕にも悩みがある…。



特に任務も無く、自分の部屋に篭もるのも良くないので、どこかに出かけようと思い、
着替えて部屋の外に出た瞬間、大きな声が聞こえた。
声が聞こえた方に行ってみると、いちご先輩と五代先輩がいた。
「いちごー!待ってよー!」
「あー!来るんじゃねぇー!」
五代先輩がいちご先輩を追いかけてるみたいだった。せっかくなので、挨拶しよう。
「いちご先輩、五代先輩、おはようございます」
「来るなー!って、お前は…最近入った95号か、
おはようって、立ち止めさせるな!」
「おはよう!ありがとう、いちごを少し止めてくれて!」
と、走りながら挨拶をして去って行った。
(五代先輩、羨ましいな……)





近くの公園のベンチに座って、顔を下にむけて、大きく溜め息をした。
(……僕も、五代先輩の様になりたい……)
と、考え事をしていると、
「おにーさん、どーしたんですか?」
女の子の声がした。前を見ると白い服を着た、10歳くらいの女の子が立っていた。
(……カワイイ)
「お兄さん、なにか悩み事ですか?」
「あっ!ごめんなさい、私こうゆう者です!」
そう言って女の子は、名紙を渡してくれた。
『ココロとカラダの悩み お救いいたします 真城 華代』
「えーと、ましろ かよちゃんでいいのかな?」
(真城 華代……どこかで聞いたことあるような……)
「はい!そうです、セールスレディなんですよ!」
「そうなんだ」
(……まさか、こんな可愛い子があの歩く自然災害なわけ……ないよね? うん、ない。絶対ない。)
「……うん、そうなんだ。……君は?」
「それでお兄さん、悩みってどんなのですか?」
「……聞いてくれるかな?」
「はい!セールスレディですから!」
「……ありがとう、じゃあ言うね。……僕は昔からカワイイものが好きなんだ。
見たらすぐ抱きしめたいくらいにね。人形とか動物とか……あと女の子、
子供の頃は良かった、でも大人になっていくうちに隠すようになっていた。
けど、人形とかなら家でも抱きしめられ。でも、女の子はそういかないだろう?
華代ちゃんも、いきなり男の人に抱きしめたら、いやだろう?
今までは、そこまでカワイイ子いなっかたから良かった。
でも、今働いてる所は、カワイイ子がいっぱいいる。
…自分の本当の気持ちをさらけだしたいんだ、けど……」
「えーと、お兄さんは女の子を抱きしめられる様になりたいんですか?」
「…そうなるね」
「わかりました、任せてください!そうだお兄さんの名前は?」
「大神 空護だけど…?」
「ちょうど良かった!ある人に自分の代わりになる人を探して欲しいって
言われたたんです。それじゃあいきますよ!」
「え!?」

すると、190cmあった身長は縮んでいき、160cmくらいになり、
水色のショートヘアは腰まで届くロングになり、胸は膨らみ豊満に盛り上がり、
お腹は程よく引き締まるが、割れていた腹筋は見えない。
腰まわりはくびれ、引き締まっていたお尻は丸みをもつ。
着ていた服は、白のパーカーは黒のオーバーコートになり、
Tシャツは赤いランニングシャツになり、ジーンズは裾が膝上までになる。
「何がおきたんだ…、ん?服が!あれ?声が高い!」
「お兄さん、これ見てください」
と、華代は手鏡をだしてくれた。そこには自分の顔は無く、
ちょっと童顔の女性の顔があった。右眼は水色だが、左眼は赤い。
「…もしかして、これが僕?」
「はい、そうです!これで女の子を抱きしめられますね!」
「確かにそうだけど…」
「大丈夫!本当の自分になれますよ!」
「華代ちゃーん、遊ぼうー!」
「あっ、りくちゃーん!」
声がした方を見ると黒い兎耳が特徴の少女がいた、りく先輩だ。
「あれ?あなたは?」
(本当の自分か…)
次の瞬間、僕はりく先輩をだきしめていた。
「あ、あの?」
「あーーーー!!!先輩カワイイ!!前から見てたけど本当にカワイイ!」
「先輩?ってことはもしかしてお前ハンターか!?」
「はい!最近入った95号です!先輩、本当カワイイ!我慢出来ない・・ごめんなさい」
「え、は?何を、やめろーーーーーー!!!!!」





「はー、やっと五代の奴をまいたよ、…疲れた」
「いちーごセーンパイ!」
「うぉ!!ってあんた誰!?」
「あっ、やっぱり分かりませんよね。僕、95号です!」
「95号?…って今朝の!?」
「はい!そうです!」
「もしかして、もしかしなくても、華代だよな!?」
「そうです!あの子のおかげで本当の自分になれました!」
「女になりたかったのか!?」
「違いますよー!カワイイ子を抱きしめることです!で、いちご先輩、この服着てくれませんか?」
と、出てきたメイド服。
「いやだ!やめろー!」
「だめですよー!待って下さいー!」





被害者は、語る。
「私が和菓子を食べてる時に、いきなり抱きついてきた。あれには驚いたよ、…すまない、これ以上は思い出したくない…」
「千景を探している時に、後ろに気配を感じたと思ったら、いきなり襲いかかってきた!
しかも、俺の剣をすべて避けて抱きついてきた!その後は…思い出したくない!」
「耳とか尻尾とか…思い出したくない…」





「で、いちごも引き篭もっていると、原因は?」
「それが、いちごがいつも以上に引き篭もっていて、精神の中まで」
「早めに出して来い、あと95号の戸籍だが…」
扉が開き、そこには95号がいた。
「こんにちはー!ボス!95号です!」
「…何のようだ?」
「戸籍の事なんですけど、自分で改竄したので大丈夫です!」
「なんだと?」
「この身体になってから、何でも出来るようになりまして!クラッキングしました!あと名前なんですけど……」
「……新しい名前は?」
「クーゴ・ハンターです!改めて、よろしくおねがいします!それじゃあ!」
「……ついでだ、いちごを出して来い」
「了解!」
扉が閉まる。
「真面目なのが騒がしくなったな……」
「…………そうですね」








ハンター組織近くの公園
「華代ちゃん、こんにちは、オレの依頼何とかしてくれたかな?」
「あ、この間のお姉さん!はい、ばっちりです!」
「そう、どんな人がなったのかな?」
「えーと、大神 空護さんてゆうカワイイ物好きのお兄さんです!あっ、今はお姉さんか!」
「……それ、本当?」
「はい、もちろんです!」
「ははは……、マジですか……あの馬鹿弟子」



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