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ハンターシリーズ113
『恐怖の女王』

作・冥龍

 

秘密組織「ハンター」の基地のトレーニングルーム。
「998…999…1000…! ふぅー、疲れたぁ!」
水色の長髪でランニングシャツに短パンのラフな格好をしてる女性、
彼女はこの前まで男だった、ハンター95号。今の名前はクーゴ・ハンター。
「がんばってるな、クーゴ。ほら」
その彼女に、飲料水を渡す、ポニーテールにした紫色の髪の長身の女性、
彼女もかつては男性、ハンター10号。半田 燈子。
「あっ、燈子先輩。ありがとうございます」
「…それにしても、すごいなあれだけの量をこなすなんて」
「そうですか? でも、前より楽なんですよ」
「前よりって…前もあれだけやってたのか?」
「はい、そうですよ」
「お前なら私の訓練に耐えれるかもな」
「あー、聞いた事ありますよ! 先輩、男の頃はかなり厳しかったですよね!」
「まあな」
「僕なら、耐えれたかもしれませんね。…それよりキツイことやらされてましたから」
「そうなのか?」
「ええ、ちょっと思い出したくないんですけど……」
「…そうか、すまんな…」
「気にしないでくださいよー、先上がりますね!」
「ああ、またな」


「ふぅー、それにしてもこの体になってから、なぜか、力が上がったなー、どうしてだろう? 華代ちゃん、女の子に抱きつくなら、普通の体でいいのに」
95号は少し考え事をしてる様子。
「……考えても仕方ないか!着替えの途中だし!」
「よし! 完了っと! さーてと、何しよっかなー」


「あれ? 一郎先輩だ? センパーイ!とぅあ!」
「うぉ! 誰だ! …お前か、クーゴ」
「はい! そーですよー! あー、先輩やっぱりカワイイです!」
「…だからといって、いきなり抱き付くのは止めてくれ」
「えー! 良いじゃないですかー!」
「…はぁ、そうだ、お前に客が来ているぞ」
「お客さんですか? 誰ですか?」
「いや、俺も伝言されただけだから分からない。カフェにいるらしいから行って来い」
「わかりました! それじゃあ!」



「えーと、どこだろう? あ! 春さーん! 僕のお客さんどこですか?」
「あら、くうごさん。お客様ならあちらですよ」
「そうですか、ありがとうございます!」


むかった先にいたのは、サングラスを掛け、膝まである黒髪に、上も下も黒い服を着た女性だった。横には大きなトランクがある。
「あのー、あなたが僕のお客さんですか?」
すると女性はサングラスを外し、
「久しぶりだな、空護。いや、今はクーゴか」
その顔は、95号と同じ顔だった。違う点を挙げるとすれば、右眼が黒色というところだ。
「えっ! 僕…!」
「………なーにが、「僕」だ! この馬鹿弟子! 師匠の顔を忘れたか!」
いきなり出てきたハリセンで頭を叩かれる。
「痛い! なにするんですか! …って師匠?」
「そうだ! お前がちっちゃくて可愛かったころ、鍛えあげた師匠だ!」
「ホントにホントの師匠なんですか!?」
「そうだ」
「………イヤー! やめてー! もうヤダー! 父さん! 母さん! みんなー!」
「うるさいな、なんだいきなり騒いで、…………黙れ!」
再び、ハリセンで頭を叩かれる95号
「痛!………その原因はあなたなんですけど………」
「何か言ったか?」
「…イエ、ナンデモアリマセーン」
「なら、良し」
「…ところで師匠、10年ぶりですねー、どうしたんですか、いきなり?」
「…お前、今の自分の格好わかって言っているのか?」
「格好って、…普通の服ですけど?」
「…本気で言っているのか?」
「え、何がですか?」
むにぃ、と柔らかい音がする。95号には理解出来なかった、一瞬の内に目の前の女性が胸を掴んできたのだから。
「こーれーでーもーわーかーらーなーいーのーかー!」
「キャアアアア! 何するんですか!」
「まだ分からないのか、お前にこれは本来無かったものだろう」
「え? …あ! そうだった、僕は元男だったんだ!」
「…お前、バカになってないか?」
「失礼ですねー!」
「まあ良い、それよりお前、前より力とか上がったり知らないことを知っていたりしてないか?」
「え?はい、確かにそうですけど、どうして師匠がそれを?」
「やっぱりか…、お前白い服を着たロリっ娘に会っただろう」
「ロリっ娘って…、…もしかして華代ちゃんのことですか?」
「そうだ、女になり、力が上がり、知識が増え、そしてオレとそっくりになった、今日はその事で来たのだ」
「え? どういうことですか?」
「…実はな、変わり身を用意して欲しいと華代ちゃんに頼んだのだ」
「…はい? それが、今の僕と、どう関係してるんですか?」
「…ちょっと、話が長くなるがいいな?」
「…拒否権は無いんでしょ…?」
「そうだ、よし話すぞ、…最近オレの仕事の依頼が多くてな、それこそ1年中埋まっているくらいにな、いいかげん疲れたオレの前に女の子が現れたんだ、するとその子は華代ちゃんと名乗って、何か悩み事は無いかと聞いてきた、そこで、オレは華代ちゃんにこう言ったんだ、『華代ちゃん、誰か代わりの人を用意してくれない?』とな、そしたら華代ちゃんは『2,3日待ってください』と言ったんだが…」
「それでどうなったんですか?」
「そのあと、仕事を終えたオレは華代ちゃんに会ったんだ、そして頼んだお願いがどうなったか、聞いたんだ、代わりの人を用意してくれたのかと、そして出た名前が…大神 空護」
「………それって僕ですか?」
「そうだ、まったく…お前は華代ちゃんに何を頼んだんだ」
「……えっと、カワイイ女の子に…抱きつける様になること…」
「……何を頼んでるんだ! この馬鹿孫!!!!!!!!!!!!」
キィィィィィィィィィィィィィン!!!!!
「痛ぅぅぅぅぅ!! 師匠、声大きすぎ! 周りのお客さんに迷惑だから!」
「ん、ああ、すまん、…しかしお前本当に馬鹿だろう」
「あんまり馬鹿って、言わないでください……、あれ? 今、なんか変なこと言いませんでした?」
「オレが変なこと? …別に言ってないぞ?」
「え?でも、確かに、……馬鹿…孫? 孫ってなんですか?」
「あ…ああ、それか、…別に変じゃないぞ。お前はオレの孫なんだから」
「へー…って、ええええええええええええええ!!!!!!」
「うるさいぞ! 客に迷惑だ!」
「すみません、って! 師匠、それどういう事ですか!孫って!」
「ああ、お前には言ってなかったか、正真正銘、オレはお前の祖母だ」
「…本当なんですか?」
「そうだ、じゃなきゃ、自分達の子供に生死を彷徨わせるようなことするのを、お前の両親が黙って見過ごす訳が無い」
「……ははは、信じられない…。…師匠、今、何歳ですか?」
「ん、ああ…忘れた。それと、これからはおばあちゃんと呼べ、良いな?」
「なんでおばあちゃんなんですか…? …その見た目なら、お姉ちゃんでも良いんじゃないんですか…?」
「…良いじゃないか…、お前には一度も「おばあちゃん」って言われたことないんだから…」
「あっ…、んじゃあ、…おばあちゃん、…これで良い?」
「なんだ、可愛い孫よ」
「…やっぱり、違和感があるね」
「そうか?…そうだ、お前、今この組織で働いているんだろう? ここは一つ身内として、挨拶廻りしよう。そうと決まれば、早速行動開始だ。ほら! 立て! 行くぞ!」
「え!? ちょっと、待ってくださいよ!」


「お、あそこにいる二人組は? お前の先輩か?」
その指が示している方向には、16号と26号がいた。
「あ、はい、そうですけど…」
「よし、では早速、あのーすみません」
「ん、なんですか? …ってクーゴか? なにやってるんだ?」
「ん、くうごさん髪を染めたのですか?」
「違います、僕はこっちです。一郎先輩、散先輩、その人は…」
「え?クーゴが二人いる! どうゆう事だ?」
「は! 兄者、もしかして、これは私たちの真似をしているのではないのでしょうか! しかし! くうごさん、それはもう、二番煎じ、いえ三番煎じです!」
「えっと、どうもこんにちは、うちのクーゴがお世話になってます。私は…クーゴの祖母です」
「「はあ、どうも…って、ええええええええええ!!!!!!!!!」」
「あらあら、面白いお友達ね、クーゴちゃん」
「うん…じゃなくて! いつもは、普通だから、てゆうか、おばあちゃん、キャラ変わってな…」
「あらあら、今、何か言ったかしらー?」
「…し、し、信じられん…」
「…そ、そんな、そんなきゃらくたぁで来るなんて…」
「あらあら、魂が抜けちゃてるみたい、…それじゃ、また御会いしましょう。クーゴちゃん行きましょう」
「え、って、ちょっと! 待って、おばあちゃん!」

「つーぎーは、あら、あの子もそうかしら?クーゴちゃん?」
「あ、はい、そうですけど…、っておばあちゃん、キャラが…」
「わかったわ、それじゃあ、…こんにちは、お嬢さん」
「え? …って、うわぁぁぁ!!」
「あら?どうしたのかしら?」
「お、お、お前! クーゴ! …じゃない?」
「こんにちは、お嬢さん、私は…クーゴの祖母です。いつもお世話になってます」
「はぁ…どうも、って、えええええええええ!!!!!!!!!」
「あら? また驚かれちゃった? どうしてかしら?」
「クーゴ、本当なのか!?」
「…はい、本当です。僕のおばあちゃんです」
「…信じられない、いや、実は、双子じゃ!?」
「違うわよー、信じられないられないかもしれないけど、本当よー。…それより、あなた、どうして、私の顔を見た瞬間、驚いたの?」
「そ、それは…、クーゴが……いやだー! 思い出したくない!」
「…クーゴちゃん? …あなた…この子に何をしたのかしら? …それに、さっきすれ違った子達に、怖がられてなかった…? …一体、何をしたのかしら?」
「えっと…、その…、あの…(言えるわけない! 抱きついたり、色んな事したなんて!)」
「…へぇ、そんな事してたんだ…」
(心の中、読まれてる!?)
「細かい事は、気にしちゃダメよ? …それじゃ、お仕置きの時間ね?」
そう、言い放った瞬間、彼女の持っていたトランクが開き、中からは、髑髏の装飾がなされた、大きな棺桶がでてきた。
「…あの、…おばあさま? …それは?」
「んー?これはねぇ、仕事道具よぉ?」
棺桶を背負い、背中に手を伸ばした。機械音が鳴り、二丁の銃が出てくる、その銃を両手に持った。
「…行くわよ? 怪我したく無かったら…、逃げなさい!」
「へ!? わぁ! 撃たないで! いやー! ってゆうか、キャラがそのま……」
どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!!!!!!!!!!!!!
ぼぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!!!!!!!!!!!!!
ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!!!!!!!!!!!!!
「……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!!!!!」


「…で、今回の基地の半壊、あなたの原因だと? 95号の御祖母さん」
「…ええ、どうもすみません。つい、この子の所為があまりに酷かったものですので…」
「…ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサ……」
「(何をしたんだ?)…まあ、とにかく、これはあまりにも…この部屋も、半分壊れてますから…」
「ええ、どうもすみません。…あの、これで直してください」
「はぁ…? …っ!!!!!!!!!!!」
そこにあるのは、0がたくさん書いてある小切手だった。
「…あの、どうでしょうか?」
「…ああ、すみません、これなら直せます。」
「…ふぅ、よかった。…あと、暫くの間、ここに住まわせてもらっていいでしょうか? この子の様子を見たいので…」
「…ええ、良いですよ。」
「よかった、あっ、そうだ、私、まだ名乗っていませんでしたね。私は、大神 冥(おおがみ めい)です、よろしくお願いします。さぁ、行きましょう、クーゴちゃん」
「…イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダー!」
キィー、バタンとドアが閉まる。
「あれが、本当に95号の祖母なのか? …信じられん。…それにしても、95号の口から白い物が出てたように見えたが…?」



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