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ハンターシリーズ119
『中華街の出来事』

作・マコト

イラスト:高野透(旧名:ムクゲ)さん (URL

 

作者註:この作品はあくまでフィクションです。作者は中国の方々を誹謗中傷するつもりは一切ありませんので悪しからず。また、作者は中国語が出来ません。exite翻訳による文なので多々間違ってると思われますが架空の物語ですのでご了承ください。

 

 

 

 

 

さて今回のハンターシリーズは、ここハンター達の寮施設から物語を始めよう。

――あ、何となくト○ンスフォーマー意識してます天の声。

その一室に一人の女性がいた。

青色で、スリットの深いチャイナドレスに身を包んだその女性の名は、ハンター61号・半田ムイ。

中国出身のチャイナっ娘だ。

――読者諸兄にはもうお分かりであらせられるだろう。

半田の姓の例に漏れず、彼女もまた真城華代により女性にされてしまった元・男である。

そんな彼女は大きな胸の下で腕を組み、何だか唸っていた。

「はぁ……、日本やはり不便ネ……。物価高いし酒マズイある。何より狭いネ!」

ぶつくさぶつくさと日本を批判するムイ。

実のところ彼女は日本が好きではない。

本部へ来たのも異動だからであって、彼女の希望ではないのだ。

変身してから若干やわらいだらしいが、それでもやはり彼女には日本はあまり合わないようである。

「ふぅ……気分転換行くカ……」

立ち上がり、部屋をでるムイ。

向かう先は、彼女が唯一日本で心落ち着かせられる場所。

――そう、中華街。 

 

 

多く聞こえる雑踏。

赤を基調とした通り。

目をやれば必ず目に付く漢字の看板。

そこは最早日本の中の中国というべき場所だった。

「うー……」

しかし、ムイの顔は何故か晴れない。

それもそうだろう。

こんなにもじろじろと男共から見られてはたまったものではない。

しかしそれもいた仕方なきこと哉。

豊満な胸をゆらし歩く可愛いチャイナ娘を見てみぬフリが出来る男がいようか?

(はぁ……女になてからとゆもの、人多いとこ歩くといつもこーなるね……)

溜息をもらすムイ。

これじゃちっとも気晴らしになんざなりゃしない。

「ねぇそこのチャイナ服の美しいお嬢さん、ちょっとお話できないかな?」

だの、

「同郷さん同郷さん、いいお店知てるあるよ。紹介しましょかー?」

だの。

日本の軟弱男達だけでなく、同じ中国人からも声をかけられる始末。

(あああああ、何とかならないあるかー……あいや?)

 ふと立ち止まり、視線をその方向へ向ける。

そこだけちょっと人がひいて、丁度円のように空いていた。

その真ん中にいるのは、数人の大きな男と、幼い少年。

「〜〜〜〜〜!! 〜〜〜〜〜!!」

男達が少年にむかってがなりたてている。

悲しいことにムイの同郷である。

「あ……あの……ごめんなさ……」

既に泣きじゃくっている少年。

見た目は10歳ほどか、小学生なのは間違いないだろう。

とても見ていられるような状況ではない。

だが、ここでムイは痛感した。

――日本人は困っている人見ても助けない……。

ただ、見てるだけ。

これだから日本人は――っ!

 

「――――」

ぽん、と男の肩に手が置かれる。

「!?」

思わず振り返る男のその頬に、一撃。

その衝撃で吹っ飛ばされていく男。

「――!?」

何が起こったのか分からない、男達、少年、そして中華街にいる人達。

そのままずんずかと、少年の前に来るムイ。

「――っ!」

激昂した男達がムイに襲い掛かる。

だが、

「覇ッ!!」

一瞬倒立したかと思ったその瞬間、ムイは両足を広げ、身体をひねる!!

円形にいた男達は、その蹴りで瞬く間になぎ倒されていった。

ムイは立ち上がり、


「消失!! 草包、真不知耻!!(きえろ!! 愚か者が、恥を知れ!!)」


凄まじい形相でそう叫ぶ。

その迫力に気圧されたか、男達はすぐに散っていった。

「――はぁ……。中華の恥晒しネ……」

そう溜息をつき、ムイは少年の方へ振り返る。

少年は恐る恐る立ち上がって、呟いた。

「あ、ありがとう……お姉さん……」

とても恐い思いをしたのだろう。声が震えている。

「無事で何よりネ。――あ、怪我ないあるか?」

しゃがみこんで尋ねるムイ。

「えっと、大丈夫です……」

少年の言うとおり、見たところ特に傷を負っているようではない。

「――一体何があたある? おに……ごほん、お姉さんに言てみるネ」

優しい口調で説明を求める。

すると少年は、少し落ち着いたのか話し始めた。

「う、うん……。ちょっと、ぶつかっただけなんだ。そしたら持ってたジュース、あのお兄さん達の一人に零しちゃって……それで」

……。

「――そ、そんなことだったあるか……」

半ば拍子抜けしたムイ。

なんという些細なことで……。

「ま、まぁ……今度からちゃんと気をつけて歩くよろし。中華街人通り多いあるからね。――それじゃ、これで行くある」

そう言ってムイは立ち上がり、その場を後にしようとした。

すると。

「お、お姉さん! あの、お名前は!?」

少年の声。

それにやれやれと、肩をすくめるムイ。

「ムイ。 半田ムイあるよ。じゃ、――再見」

「は、はい!」

ムイはその後後ろを振り向かなかった。

だけど、少年が手を振っているのを感じていた。

 

 

本部に戻って。

ムイはベッドの上で天井を仰ぎ見ていた。

今、彼女は今日体験した様々なことを思い出していたのだ。

周囲の男達からの視線、男を一撃で殴り倒した拳。

視線の件はあまり思い出したくないが、後者に関して思うところがあるようだった。

「私――あんな拳法使えない」

今日、男達に見せた回し蹴り――所謂スピニングバードキック。

男であったときから、拳法は使ったことはないし、習ってもいない。

だから、本来あのような技を使うことなんて出来ないはずなのだ。

一体何故?

「真城華代……かな」

真城華代。

ムイを含めたハンター達全員の宿敵たる正体不明の存在。

ムイもまた、彼女によって性転換被害を受けた者の一人。

真城華代最大の迷惑ポイント、それは「勘違い・思い込み」にある。

だから、彼女がもし中国人を「拳法の使い手」という先入観をもっていたとしたら――ありえない話ではなかった。

ていうか、それ以外考えられなかった。

「――職業上のなんとか言う奴あるね……」

はぁ、と溜息をつき、ごろんと横を向く。

――そのまま夢の中へと誘われていく。

 

彼女の欠点はいくつかある。

その一つが。

「むにゃ」

ドタン。

「うにゅ」

バタン。

「みゅー」

ゴトン。

「ふもっふ」

デデン。

 

「あーいーやーZzzz」

ドタンバタンドタンバタン!

「うっさいなぁーもぉー!! 静かにしてくれーっ!」

隣の部屋で昼寝してた12号・逸美の怒鳴り声は、夢の中にいるムイには届かなかった。

 

 

 

数日後、件の中華街。

ムイは再びそこへ足を運んでいた。

今回は単純に食べ歩きのためだった。

双葉がいきたーいと言っていたが学校で来れずとても残念がっていたのは言うまでもない。

「皮蛋に饅頭。そして杏仁豆腐。うーん、美味。やぱり食べるは本国のものネ」

色々買い込んでご満悦な様子であった。

「……稍等」

「!?」

突然呼び止められて振り返る――。


ボグッ!


「ぐ!?」

強烈な痛みがムイの鳩尾を貫く。

「あ……ぅ……」

そのままよろよろと前のめりに倒れていくムイ。

最後の力を振り絞って顔を上げる。

「……イ尓(お前は)……ぅ」

意識を失う直前、見た顔は。

先日叩きのめしたあの男だった――。

 

「愚蠢的第女人。變成這樣乘情形(馬鹿な女め。調子に乗るとこうなるのだ)」

そう言いながら笑う男。

その筋肉質な顔にはバンソウコウが貼ってある。

恐らくは先日、ムイに殴られた痣であろう。

そして、後ろからぞろぞろと男達が現れた。

彼らは皆、同じように先日ムイにこっぴどくやられた者達だった。

「這個女人怎樣做?(この女、どーすんだ?)」

ひょろっとした感じの男が尋ねる。

「當然,使之後悔在這個街打了我們的事! 哇哇哇哇!(もちろん、この街で俺達に手を上げたことを後悔させてやるんだよ! はっはっは!)」

下品な笑いをあげ、気を失ったムイを抱きかかえて男は移動を始めた。

それに釣られて、取り巻きの男達も歩き始めた。

やはり周囲の人は見てるだけ。警察に連絡しようとする者がいるかさえ怪しかった。

――だが、一人だけ。

 

「ムイお姉ちゃんが……! くっ!」

男達の後を追う、少年。

数日前に、ムイに救われたあの男の子である。

(僕の所為でお姉ちゃんが……! 助けなきゃ!)

ただその一心で追いかける。

本来ならこういう場合、警察に連絡をとる、大人に協力を仰ぐなどの必要があるのだが、幼い少年にそこまで思考をまわすことは出来なかった。

でもただ一つ、少年は「する」のだった。

(神様……! お姉ちゃんを助けて……!)

 

「どうしました? お困りごとですか?」

 

「――え?」

突然話し掛けられ、少年は立ち止まる。

振り返ると、いつのまにかそこには、一人の女の子が立っていた。

その姿は純白。

そして、姿は自分と同じ年――いや、もっと低いかもしれない。

「何かお困りごとでしたら、私が解決しちゃいますよ♪」

にっこりと笑う少女。

何を言っているのか、少年にはあまり理解できなかった。

「い、今それどころじゃないんだ! 大変なんだから!」

「大変……? どうしたんですかー?」

首をかしげる。

ちょっと少年はイラッときた。

「用がないんならほっといてよ! 知り合いのお姉ちゃんが悪い男達に捕まっちゃったんだ! だから助けに行かなきゃいけないんだよっ!」

そう叫ぶと、再び走り出そうとする少年。

「なるほどなるほど……要はその悪い男の人を無害な人にしちゃえば大丈夫ですねっ。分かりましたっ!!」

そう後ろで声がしたが、少年は振り向かなかった。

 

 

「待てー! お姉ちゃんを離せーっ!」

細くも大きい声が、男達の足を止めさせる。

そして、一斉にその方向へ振り返った。

(この……声、は)

その声にうっすらと目を開け、少しだけ顔を上げるムイ。

そこにいたのは、先日のあの少年だった。

あんなに弱虫に見えた少年が、勇気を振り絞ってそこにいる。

「ば……か……逃げる……よろし……」

力なくそう告げるムイ。

だけど、少年は引かない。

「だって、こないだはお姉ちゃんが助けてくれたじゃないか! だから、今度はボクが……!」

そう言って、少年は歩き出す。

男達はそれを笑いながら迎える――が。

「!?」

突然、男達の動きが止まる。

少年も足を止めた。

「什麼!?(何だ!?)」

「身體……?!(身体が……?!)」

急激に縮んでいく男達の身体。

ムイの身体は放り出される。

「あだっ!」

背中から落ちるムイ。

「お、お姉ちゃん! 大丈夫!?」

慌てて駆け寄る少年。

心配そうにムイを見る。

「あたた……だ、大丈夫ね。心配かけたある」

そう言って笑ってみせるムイ。

「よかったぁ……。でも、何が?」

安堵するなり、少年は尋ねる。

今もなお変化を続ける男達のことを。

男達の身長は1mを切り、変化は次の段階へと入っている。

「發生著什麼?!(何が起こってるんだ?!)」

とても幼い声になってしまった男達。

その姿は最早幼稚園児のそれである。

身体に合わせ、服も青いあの制服へと変わっていく。

そして、最後には黄色い制帽と小さな鞄。

男達は今や、誰が見てもまごうことなき幼稚園児と化していた。

無論、女の子である。

「――君、ここに来る途中で白い女の子にあわなかたか?」

「え? う、うん。急いでたからあんまりお話しなかったけど……」

「――あは、ははははは……」

そこでムイは全てを悟る。

自分は助けられたのだ。あの少女に。

 

 

「ううう……どうしてわたち、こんなになったのぉ……」

「ふええええ……」

「こんなかっこやだぁ……」

泣き出す元男達。

日本語なのは、恐らくは真城華代が彼らが外国人であることを知らなかった為。

「さーて、そこの可愛い娘々達?」

ぐぐっと、園児に向けて顔を近づけるムイ。

「もしも元に戻してほしかたら、二度と他人に暴力ふらない。いいアル?」

ちょいと恐い顔で言う。

「ひっ……う、うわあああああん!!」

それに驚いたのか、元男の園児たちは何処へともなく逃げてしまった。

「あいやー……ちょっとやりすぎたかな」

ぽりぽりと頬を掻くムイ。

あのままほうっておいても警察かどっかで保護されるだろう。

いや、もしかしたら真城華代が何らかの措置をとってるかもしれない。

――あまり想像したくはないが。

「ふぅっ……」

大きく息を吐き、身体を伸ばす。

今日一日色々なことがまたあったものだから。

「そだ、君」

「え?」

少年の方を向いて、彼の身長に合わせてしゃがむ。

そして彼の頭をなでて言った。

「今日はありがとね。君にはとても感謝してるよ」

「そんな……僕は何もできなかったし」

美しいムイの顔が間近にせまり、照れて少年は顔を背ける。

「そんなことない。君が来てくれたのはとても嬉しかたある」

にっこりと笑顔を見せるムイ。

ますます少年は照れてしまうのだった。

「あの、ムイお姉ちゃん」

「んー?」

頭を振り、少年が言う。

「お姉ちゃんは一体どういう仕事してるの?」

「あー……んーと」

直接的な質問に、言葉に窮するムイ。

少し考えて、一番理想的な言葉を選び出す。

「困てる人を助ける仕事――かな」

ちょっと照れながらそうムイは言った。

 「ふわあ……すごいんだね!」

キラキラした目でムイを見る少年。

その眩しさは計り知れない。

「ま、まぁ……。もし私に会いたくなたら――またあの中華街に来るね。きっとまた会えるね」

そう言ってムイは、微笑んであげた。

「う、うん! またね、お姉ちゃん!!」

元気良く返事をして、少年は駆け出す。

その背中にムイは呟く。

「お姉ちゃんだけは――勘弁してほしいある……」

しかしムイの気分はとても爽やかだった。

――本部に帰るまでは。

 

 

 

「この馬鹿者があ――っ!!」

 

ピシャーン!!

 

「うぎゃあああああああ!?」

 

突然の稲妻。

直撃を受け、黒こげとなりムイは倒れる。

「うう……一体……何が……」

かろうじて意識を保ち、顔を上げると。

「――あ」

そこいたのは、鬼のような形相をしたガイスト02――否、魔法少女ガイスト☆レッツ。

ガイスト、即ちハンターの監視・警察組織。そのエキスパートが彼女なのだ。

「貴様の行動全て見通しておったわ! 如何に悪人とはいえ、真城華代の毒牙にかかった者を放置するとは!!」

「で、でも……流れ的にそんなの無理――」

「問答無用! これから貴様はガイストの名の元に一週間パシリの刑を宣告するっ!!」

「あいや――っ!!?」

 

仕事はきっちりこなしましょう。



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