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ハンターシリーズ138
『お茶会』

作・ふう

 

ハンター組織の廊下を、バスケットを手に、ブルーの服を着た少女が、ため息をつきながら歩いている。
「はぅー、ついにこのときが来てしまったぁ〜・・・・・、今までは事務所の中だけだったのにぃ、ふえーーん」

思い起こせば、3時間ほど前・・・。
・・・
せーの、
「「よ・つ・ば・ちゃん!! おはよーーー、あさよ〜〜〜を通り越して、もお、おひるよーーーー!」」
ふにゃー・・・・、は!
「わぁ〜〜〜〜〜!! 遅刻だー!!!!!」どどど・・・、ごぉ〜〜〜〜ん!!!!
「たおれるぞ〜、つっじゃない」
「わー、どうしよう。
ああーーー、先輩方に何されるか。
どうしよ・どうしよ、どーーしよーーーぉ」
「もしも〜し、もしも〜ぉし、四葉ちゃん、全部まる聞こえよ〜〜ぉ」
「は!
せんぱい、今の無し、お代官様、なにとぞお慈悲をー」
・・・
・・・

「はぁ〜、新記録更新だからって、
【りく先輩とお友達に差し入れを持っていくには、これに着替えて】
って渡されたのが、まさか不思議の国のアリスの コスチューム と は・・・」

「はぁ〜・・・」
今日、何回目かのため息をついたころ、りく先輩の部屋の前に着いていた。

・・・

ここまできたら仕方ないか・・・・「はふぅー・・・」とまた、ため息をした後、ドアをノックし、
「リク先輩居ますかー?」
と声をかける。
少し待っていたけど、返事がなく・・・・中からははしゃぐ声が聞こえてくる・・・から居るはずだけど・・・・
一回じゃ聞こえなかったのかな? と、気を取 り直してもう1度ノックをする。
「はーーい」
の声とともに、ドアが開き、黒い兎耳少女が顔をだす、そして服装を見て固まり・・・・・、
声をかけてきた。
(おい、おまえ、なんて恰好してるんだ!?)
(はあ?!
あ、先輩方(水野さんと、沢田さん)に、リク先輩の所に行くには、ぜひこれを着ていけと言われまして、懐中時計も渡されました。
お茶を飲むときは持っ ているよう にと)
(あいつら、俺をダシに使ったな・・・。
まあそれはいいとしてだ。
おまえ何人分もってきたんだ?)

(へ? 先輩方に、ティーカップ3人分渡されたんで、お友達が2人来ていると思ったんですが・・・)
(ほぉー・・・ということは、お前も一緒にお茶してこい、ということだな。
今居るのは俺と、言わずもがなわかると思うが華代ちゃんの2人だけだぞ)

(えええ!!! うそぉ〜〜〜〜部屋に差し入れするだけだと思ったのに〜)
とムンクの叫びをしたとき、部屋の奥のほうから声がした。

「なに話してる の?」
「いや、友達が、お茶の差し入れ持ってきてくれたんで、ありがとう、ていってたところ〜」
「じゃあ、お友達も一緒にお茶しましょ。
2人だけだとちょっと寂しいから」
「そうするように、そのことも話してた所だったんだ」
・・・
(そういうことだ、あきらめろ)
(はあ・・・それって、もお決定事項なの・・・僕の立場って・・・)
今日何度目になるかのため息をつく。
でも、ここで引き返してかえったら、今度は先輩にもっと違うことされるかも・・・・。
気落ちしながらも、
「では、ちょっとキッチン借りますね。すぐ準備しますから」
と部屋の中に入ってお茶の準備にとりかかる。
ティーカップをお湯で温め、少ししたころ。
今度は事務室で入れてきた紅茶を保温用ポットからカップに移す。
りくは、お茶ののったトレイを両手いっぱいに持ち運んでくれた。
その後、クッキーの入ったバスケットを手に、また小さくため息をつき四葉ちゃんが続 く。
そして、カップがテーブルに並べられ、クッキーをバスケットから取りやすいようにだし並べた。
(もうここまできちゃったら仕方ないか)と諦め、
「お口にあうかどうかわかりませんが、どうぞ」
と、とりあえず、言ってみる。
でも2人は、ちょうど良く休憩になったのと、小腹が空いてきたこともあり
「わーーい、待ってましたー、それでは、いただきま〜ぁす」
と元気良く、お 茶会は 始 まった。
少しして、これだけよろこんでくれたら、まあたまにはいいかなっと、思い直し始めたころ。
「あ、そうそう、私はこれでもセールスレディをしてるんですよ」
と言い、華代ちゃんが、1枚の名刺をくれた。
「これはこれは、ご丁寧に。
それでは、私からも、こういうものです、どうぞ」
と四葉ちゃんは、先輩方の作ってくれた名刺を渡す。
「へー、おねえさん、四葉っていうんですね。
でもこれ、手書きで(男)って書いてありますけど?」
と名刺に、間違いが書いてあるのを指摘するように きいてきた。
「ああ・・・それね?
事務室でお茶会してるとき、人が来るとよく間違われるんで、メモ代わりに書いてあるんだ」
(それに・・・、先輩たちが作ったこの名 刺、捨て た らその後、なに さ れるか・・・)
「へ!? ということは、男の人なんですか?
・・・今まで女の方だと思ってました」
(はー、やっぱり皆同じこと思うんだ)
「いやいや、そんなに気にしなくても良いですよ、いつものことなんで」
「そうですか、やっぱりおねい・、じゃなかった、お兄さんも悩みがあるんですね、では私がその問題を解決してあげます」
と、私に任せてとでも言うように胸をはり、とんと胸をたたくようなしぐさをした。
そして、どこからともなくリボンを取り出して、このワンポイントが重要です、と いわんばかりに髪の毛に手を伸ばす。
「あ、きもちだけ・・・」と言いかけたけど、
華代ちゃんは、すでに髪をリボンで結びはじめていたので、まあ人の好意は素直に受けないと、と思い直し、
「じゃあお手柔らかに」
と言い、素直にされるままにしていた。
そしてリボンを結び終わり、これで大丈夫ですよっ、と言った時。
”ふわっと”体を春風が通りすぎるような感じがして、そして、なんだか部屋が気のせいか 広くなったような・・・?
 (はれ? なんか変わったような。気のせいだよね??)
と考えていると
「これで大丈夫ですよ。
やっぱり、この服装にはリボンがないと、決まりませんね」
と、これで問題は万事解決ですと、満足げに華代ちゃんは締めくくる。
そして
「それじゃあ続き・続き」
と、お茶会は何もなかったようにつづいていく。
・・・
飲み物とクッキーが無くなるころ、自然にお茶会はお開きになり、
「じゃあ、僕そろそろ帰るね」
と楽しかったお茶会の余韻に浸りながらも、後かたづけをし、そしてドアを開き、
“それでは”
と挨拶をしたところで
「四葉さん、今度はお茶とクッキーの作り方教えてね、すっごくおいしかったから」
と華代ちゃんは、今度も会えるように声をかけてきた。
「うん、また来たとき、気軽に声をかけてね」
と、約束をし、リク先輩を見る、と
(後ろのほうで”あちゃー”というような顔をしてる・・・???)
なにかあったのかな?と考えながらも、それでは と、リク先輩の部屋を後にした。
まあ、時には、違ったところでお茶を飲むのも、気分転換になっていいかも、
と思いながら、事務所にむかう。
先輩方にお茶会の報告をした後、制服に着替え始めた時、体の異変に気がつき
「なんだこりょあ〜〜〜〜〜〜ーーーーーーーー・・・・・!!!!」
の叫びとともに頭の中が真っ白になる。
声に気づいた水野さんと、沢田さんが更衣室に駆け込んできて、四葉ちゃんの変わり果てた姿を、じ・・・・っと観察し、
「・・・あらー、これで四葉ちゃん、名実ともに半田 四葉ちゃんだね」
とあまり驚きもせず感想を言い、
「これは早速ボスに報告しないと」
と更衣室を 出て行く。
ボスは報告を聞くと
「また厄介なことになったが、まあ仕方ない。
テント生活はまずいから、半田 四葉の部屋を用意して、ハンター14号にもう一度ホットラインを引きなおしてもらえ。
で事務の仕事はこれまでと同じだ、後の扱いはお前たちに一任する、以上だ」
と今後の扱いを、水野、沢田両名に指示した後、いすを半回転させ、外を見、いつものポーズをとる。


○おまけ「TSしてからすこしったったころ」
「もお、四葉ちゃん。いつまでそんなむさい黒のスーツ着ているの。女の子だから、これ着ないの?」
「いいえ、着ません。いちご先輩を見習って、スーツを着ているのです!」
「ふーん、そーーなんだ。じゃあ、ちょっと待っていてね・・・・・」
・・・
「おまたせー、ハイこれ」
「へ。何時もなら、女装・コスプレ系持ってくるのに、これ男物ですね・・・」
「そういうわけだから、ハイ着替えてね」
・・・
・・・
「着替えてきましたけど。なぜに半ズボンなんですか?」
「わーー、思ったとおり、よくにあーーう。ぎゅっとしたくなっちゃうくらい!!」
「ほんと、変わる前より、ちょっと幼くなったから、これは禁断の組み合わせかも!」
「はぅ・・・、せんぱい方?、何かよからぬ妄想してませんか?」

・・・こうして、いつもの日常はすぎていくのでした。・・・
【すぎてなーーーい】と四葉ちゃんは、また、叫んでいた。


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